研究概要 |
骨粗鬆症罹患者数は現時点においても推定1,000万人以上と考えられ、今後到来する超高齢化社会においてはさらに患者数が増加するものと考えられる。骨粗鬆症の本質は骨強度の低下であり、それ自体直接死につながる疾患ではないが、重度の骨粗鬆症では体の重みが加わるだけでも骨折の原因になるため日常生活に支障をきたす疾患といえる。骨の強度は骨密度と骨質により決まるため、骨粗鬆症に起因する骨折を予防するには骨密度と骨質の両方を改善する必要があるが、現在広く行われているビスフォスフォネート製剤による治療では骨密度の改善は得られるが骨質の改善は困難であり、骨折の予防効果は3割から5割程度とされている。また、ビスフォスフォネート製剤は顎骨の壊死や消化管障害などの重篤な副作用を起こすリスクがあることが明らかになってきたため、骨質の改善が可能で副作用の少ない新たな骨粗鬆症治療法の確立が待ち望まれている。本研究は、骨粗鬆症の幹細胞治療の可能性について検討を行うものである。 平成23年度は、骨粗鬆症治療に使用する多能性間質細胞(間葉系幹細胞)を骨髄から効率的に単離する方法について検討を行った.骨髄多能性間質細胞(BMSC)を得る方法としては培地で希釈した骨髄液をプラスチック容器に入れて付着培養する方法が一般的であるが、骨髄にはBMSC以外にも多種類の付着性細胞が含まれているためBMSCの単離法としてほ非効率的である。そこで、本研究では骨髄に含まれる単核球細胞分画のみを培養することでBMSCが効率的に培養できるか検討を行った。ラット(SD)の大腿骨から採取した骨髄液を密度勾配遠心処理、または溶血処理し、単核球細胞分画を採取した。これらの細胞を従来の方法(無処理の骨髄液を培地で希釈し付着培養)で得た細胞と比較を行ったところ、密度勾配遠心処理で得た単核球細胞分画にはBMSCが多く含まれていることが明らかになった。
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