研究概要 |
本年度は濃縮骨髄幹細胞の骨密度・骨質改善メカニズムについて検討をおこなった。濃縮骨髄幹細胞(CD11b- , CD29+, CD45-, Sca-1+ MSC)は昨年同様MACS(磁気細胞分離法)を用いて分離した。コントロールとして、濃縮していない骨髄間葉系幹細胞(non-sorted MSC)を使用した。 骨芽細胞への分化能; 濃縮骨髄幹細胞の骨芽細胞への分化能を検討するために、骨芽細胞分化誘導培地で1週間分化誘導後、アルカリフォスファターゼ活性を測定した。その結果、濃縮骨髄幹細胞はnon-sorted MSCの2.9倍の活性値を示した。 破骨細胞形成抑制能; 濃縮骨髄幹細胞の破骨細胞形成抑制能を検討するために、破骨前駆細胞を濃縮骨髄幹細胞またはnon-sorted MSCとの共培養下で分化誘導を行った。その結果、濃縮骨髄幹細胞はnon-sorted MSCの3倍の破骨細胞形成抑制能を有することが明らかになった。 ELISA; 濃縮骨髄幹細胞の破骨細胞抑制メカニズムを明らかにするために、上記共培養実験で回収した培養上清中に含まれるOsteoprotegerin (OPG), Macrophage colony-stimulating factor (M-CSF), Receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand (RANKL)の濃度を測定した。その結果、濃縮骨髄幹細胞は破骨細胞抑制因子であるOPGは非常に良く放出するが、破骨細胞誘導因子であるM-CSF, RANKLはほとんど放出しないことが明らかになった。 以上の実験結果から、濃縮骨髄幹細胞は非濃縮の幹細胞に比し、高い骨芽細胞分化能と破骨細胞形成抑制能を有するため、この細胞を注入することでより効果的に骨密度・骨質改善が得られることが示唆された。
|