研究課題/領域番号 |
23700009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河村 彰星 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20600117)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 計算量 / 帰納解析学 / 数値計算 |
研究概要 |
本研究は解析学における計算量を理解するという目標に向け、(1)理論的枠組の深化、(2)諸問題への応用、の両面で貢献を目指すものである。本年度の主な成果は次の通り。理論構築の面では、実数など近似によって捉えられる対象に計算量理論を応用するため、二階多項式を用いた枠組を作ったことにより、従来よりも多くの対象なかんづく実函数にはたらく演算子について計算量を論ずることが可能になった。これは先年度の成果も含めたものであるが、計算量クラスの扱いなどに新たな検討を加えて洗練し、電子情報通信学会の研究会で発表するとともに、米国計算機学会(ACM)計算理論誌に受理された。この枠組に関し、十月に帰納解析学に関するダクシュツール研究集会において、関連する今後の検討課題について発表した。ここで函数空間の表現について構成的数学の専門家と議論を深めたことで、より強力な一般化に向けた端緒を得たので、海外研究者と協力して検討を続けている。応用の面では滑らか(微分可能)な常備分方程式の計算量について、多項式空間困難などの下界を得て国内学会エルエーシンポジウムにて発表した。様々な滑らかさの条件は数値計算の諸問題で重要な役割を果しており、その計算量への影響を理解することは本計画で優先すべき課題である。次年度もダルムシュタット工科大と共同で研究を継続する。また一変数の解析函数にはたらく演算子の扱いについても、上述の計算量の枠組において用いるべき表現について成果を得た。次年度の国際会議での発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として当初より設定していた(1)理論的枠組の深化と(2)諸問題への応用の双方において進展があり、目標としていた具体的項目の一部が達成された(二階計算量理論の対象を拡げる一般化、及びそれを用いて葛による演算子の計算量を精密化する応用)。この成果については前述の通り論文誌及び国内外の会議で発表を行ったのみならず、海外の研究者とも緊密な協調関係を築き更なる発展に向けて研究を継続しており、進展状況は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは上述のように成果が上がりつつある函数空間の表現、滑らかな微分方程式、解析函数の表現について、更に議論を精密化した上で適当な国際会議等に投稿する。その上で、研究計画に設定した理論・応用の課題のうち未着手のものに取組む。特に至近の目標としては、理論面では数値計算の安定性の理論と手法を取込むことを目指し、応用面では現実の物理世界に関わる微分方程式について研究する。23年度の成果等により発表、渡航の機会を得たのでこれも活用して海外の専門家と連携して研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に引続き数理論理学、計算理論、数値計算の三方向からの情報収集のための書籍を中心とした物品費を要する。また新年度は五月の研究集会(独国トリーア)と六月の国際会議(英国ケーンブリッジ)の両方で、招待講演及び本研究で得た成果についての一般発表をすることが既に決定しており、このために旅費の大部分を使う。このほか情報収集のために謝金や成果発表の費用を若干使う。これは当初計画の通りであり特に変更はない。
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