本研究は、解析学における計算量を理解するという目標に向け、(1)理論的枠組の確立、(2)諸問題への応用、の両面での貢献を目指すものであった。期間全体の主な成果は次の通り。 理論面では、実数など近似によって捉えられる対象の計算における資源制約を議論するため、二階多項式を用いた枠組を使うことにより、従来よりも多くの対象(実函数にはたらく演算子など)について計算量を論ずることができるようになった。また、この枠組を多項式時間よりも小さい計算量級に適用する場合の精密化のしかたや、函数空間の構成ができるための条件についても明らかにした。 応用面については、予てから解析函数においては各種の演算子の計算量が多項式時間で済むことが知られており、これが解析函数以外でどのようになるかが次なる課題であった。本研究で、函数が滑らかであるのみでは直ちに微分方程式などの計算量が抑えられないこと、しかし解析函数に近いジュブレの級と呼ばれる函数については、その近さを表す指標に応じた計算量となることなどがわかった。また、ラプラス・ポアソン方程式の複雑さについて幾つかの意味で下界を示した。 以上の結果を踏まえ、平成26年度からの「連続系計算量理論の深化と展開」で更に研究を進める計画である。 なお期間延長後の最終年度である平成26年度には、25年度までに得られていた結果や今後の課題について、26年4月初旬にフランスで行われた研究集会での招待講演で発表した。
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