研究課題
性能のよい符号とは、多くの誤りを訂正でき(ランダムネスをもち)、かつ効率的な復号法を有する(構造をもつ)符号である。本研究では、相反する性質(ランダムネスと構造)をもつ性能のよい誤り訂正符号の設計及びその性能を解明することを目的とする。代表的な通信路モデルである二元対称通信路では、ランダム符号で最適な性能が引き出されることが示されている。一方で、最悪通信路モデルを考えると、二元符号の場合、知られている符号化法ではランダム符号が最も良い性能を示すが、その最適性については未解決である。そこで、二元対称通信路と最悪通信路との中間的な通信路モデルを考え、その通信路における符号の存在性および性能を調査した。中間的な通信路モデルとして、標本可能な加法的通信路を考えた。標本可能とは、多項式時間で計算できるという意味であり、加法的とは、誤りが符号および送信符号語に依存せずに発生するという意味である。また、通信路で発生する誤りの数は制限しない。この通信路は、二元対称通信路を特殊な場合として含む通信路であり、計算能力を制限した通信路として誤り数を制限しないものはこれまでになく、新しい通信路モデルといえる。この通信路は、誤りの発生メカニズムが比較的単純であるにもかかわらず発生する誤り数の上限がわからないような誤りをモデル化している。この通信路モデルにおける誤りの訂正可能性を調査し、誤り分布のエントロピーを基準として訂正可能性を調べた。その結果、一方向性関数が存在する場合、任意に小さい多項式エントロピーをもつ訂正不可能な誤りが存在することがわかった。また、あるオラクルへアクセスが可能な状況において、効率的なシンドローム復号では訂正できないような超対数エントロピーの誤りが存在することがわかった。また、誤りが平坦分布であると仮定した場合、それを最適なレートで訂正可能な線形符号が存在することがわかった。
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