研究概要 |
本年度は,重み付きマッチング森についての論文 (下記 [1]) を発表した.重み付きマッチング森に対しては,多項式時間アルゴリズムや,完全双対整数性を持つ線形計画表現が知られていた (Giles 1982, Schrijver 2000).本研究では,マッチング森の端点集合がデルタマトロイドと呼ばれる離散凸構造を持つことを証明し,さらにその拡張として,重み付きマッチング森が付値デルタマトロイドを導出することを証明した.これは,マッチング森が完全双対整数性の他に,離散凸性という良い性質を持つことを新たに明らかにしたものである. また,Giles のアルゴリズムに対し,この離散凸性に注目することによる単純化および,Gabow (1973) の重み付きマッチングへの手法を用いた高速化を行った. さらに,グラフの辺連結度増大問題,最小2辺連結全域部分グラフ問題,Barnette予想,巡回セールスマン問題の4/3予想などの問題に対し,離散凸解析の理論に基いたアプローチを進めている.これらの問題の多くはNP困難であり,離散凸性に注目した,良い近似率を持つ高速なアルゴリズムの設計を進めている. [1] K. Takazawa: Optimal Matching Forests and Valuated Delta-Matroids. SIAM Journal on Discrete Mathematics, 28 (2014), pp. 445-467.
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