研究課題/領域番号 |
23700021
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西出 隆志 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (70570985)
|
キーワード | 公開鍵暗号 / ファイル共有 / 検索暗号 / 属性ベース暗号 |
研究概要 |
分散環境におけるデータの安全な保存かつ共有方法に関する研究を進めてきた.これはクラウドコンピューティングを利用することによる利便性を得ながら,そのデータアウトソーシングに伴う安全性の低下を緩和させる手法として暗号研究において重要視されている.研究テーマの一つとして検索可能暗号に取り組んだ.検索可能暗号とはデータを暗号化してクラウドサーバに保存し,その内容をクラウドサーバに秘匿しながらも,クラウドサーバに指定したキーワードを用いてデータを検索させる技術である.昨年国内で発表したブルームフィルタと呼ばれるデータ構造を用いる検索可能暗号について,攻撃者をモデル化し,そのモデルにおける提案方式の安全性の解析を進めた.更に提案方式の性能を確認するため,簡易実装を行い,実用レベルに近いことを確認した.また属性ベース暗号と呼ばれる技術にも取り組んだ.属性ベース暗号を用いることで,データに対する復号条件を指定した形で暗号化を行えるためデータに対するアクセス制御と共有が容易な形で行えるという利点があり,そのため活発な研究が行われている.属性ベース暗号においては鍵を生成する機関が存在するが,今回は複数の機関が共存可能な属性ベース暗号に取り組み,その機能拡張として生成された鍵の失効機能について検討を行った.特に属性ベース暗号の実現に利用される数学構造として素数位数の楕円曲線上の群構造を用いる方式を検討し,一度生成され配布された鍵に対し,利用者のIDと時間情報に基づく失効が可能な方式を検討した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブルームフィルタを用いた検索可能暗号方式は安全性の証明を完成させ,暗号技術に関する国際学会に投稿し,採択され一定の評価を得ることができた. また検索可能暗号の従来の一般的な安全性の定義に関して,もし攻撃者が事前にキーワードの出現頻度を入手可能な場合は,秘密のキーワードを推測できる可能性があることを示した論文が国際会議で採択された. また属性ベース暗号に関して,鍵の失効機能の実現に必要な既存研究を広く調査し,複数の鍵発行機関が存在でき,鍵失効機能を持つ属性ベース暗号方式の基礎設計まで進めることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
検索可能暗号とその攻撃可能性に関する論文はジャーナル論文への投稿を行うため更なる推敲を行う.また属性ベース暗号に関する論文は現時点では公開鍵パラメータの数が多いという欠点があり,安全性の証明が未完成という状態であるため国際学会への投稿を目指し,完成へ向けて更なる検討と調査を進める.特に属性ベース暗号においては公開鍵パラメータをより減少させるためのヒントとなりうる既存研究を深く調査し,実用可能な方式の構成を目指す.
|
次年度の研究費の使用計画 |
公開鍵暗号や暗号プロトコルに関する重要な研究結果が発表される国際学会などへの参加費用に用いる.また論文が採択された場合は論文掲載別刷代への使用も計画する.また研究の途中成果に関しては国内の研究集会へ参加し,他の専門家からの意見を得て研究の改良を進める.
|