研究課題/領域番号 |
23700025
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
山本 真基 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (50432414)
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キーワード | サンプリングアルゴリズム / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 混合時間 / 近似数え上げ |
研究概要 |
マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC 法)は,理論計算機科学において強力かつ重要な道具であり,多くの研究者が注目を寄せている研究領域である.本研究では,以下の2つを通じてそれらを解決することを目的とするものである:1. 新たなサンプリングアルゴリズムを提案する,2. 混合時間を算定するための新たな理論的解析手法を提案する. 今年度の具体的な研究目標は,半順序集合のイデアルの数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決することであった.この問題は,#2-SAT 問題の部分問題(#1P1N-2CNF 問題),更には,2部グラフの頂点独立集合の数え上げ問題と(近似可能性に関して)等価な問題であるということが知られている.また,前回の実施状況報告書から,Tutte 多項式に関して,木の数え上げ問題及び森の数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決することも今年度の課題の一つであった. これらの研究課題に関連した研究実績は,木の数え上げ問題において,次数が高々3であるようなグラフに限った場合に,木のランダムサンプリングが可能であることから,木の数え上げ問題が近似可能であることを示したことである.昨年度の研究結果とを合わせると次のようなことが分かった.グラフの基本的な構造に,パス,サイクル,木の三つがある.この三つに対して,1. パスの数え上げ及びサイクルの数え上げは近似不可能である.2. 次数が高々3であるグラフに限れば,木の数え上げは近似可能である. また,半順序集合のイデアルの数え上げ問題と関連のある,グラフの頂点独立集合の数え上げ問題が近似不可能であるという論文が発表され,その論文の調査を行った.これは,2部グラフの頂点独立集合の数え上げ問題,つまり,半順序集合のイデアルの数え上げ問題の近似可能性・不可能性の解明に大きく関係する事実である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の具体的な研究目標は,半順序集合のイデアルの数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決することであった.また,前回の実施状況報告書から,Tutte 多項式に関して,木の数え上げ問題及び森の数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決することも今年度の課題の一つであった. これらの研究課題に直接に関係する研究成果は,木の数え上げ問題において,次数が高々3であるようなグラフに限った場合に,木のランダムサンプリング可能であることから,木の数え上げ問題が近似可能であることを示したことである. ただ,次数がそれ以上である場合は,同じようなサンプリングアルゴリズムが適用できるかどうかは自明でないように思われる.これまにでない,標本点間を大きくジャンプするようなマルコフ連鎖を構成する必要があるようにも思われる. これとは逆に,近似不可能であることを示すことに関しても,パスやサイクルがそうであったのと大きく異なる状況である.全域パス(ハミルトンパス)の数え上げ問題や全域サイクル(ハミルトンサイクル)の数え上げ問題は#P困難であるが,全域木の数え上げ問題は多項式時間計算可能である. そういったように,当初の想定とは違って,課題解決にこれまでにない斬新なアイデアを出す必要があることが,達成度がやや遅れている理由の一つである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の具体的な研究目標は,半順序集合のイデアルの数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決することであった.また,前回の実施状況報告書から,Tutte 多項式に関して,木の数え上げ問題及び森の数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決することも今年度の課題の一つであった. これらの研究課題に直接に関係する研究成果は,木の数え上げ問題において,次数が高々3であるようなグラフに限った場合に,木のランダムサンプリングが可能であることから,木の数え上げ問題が近似可能であることを示したことである. ただ,次数が高々3であるようなグラフに限った場合に,この問題が難しいこと,つまり,#P困難であることが示されていないのが現状の大きな問題である.一般のグラフでは,木の数え上げ問題が#P困難であることは示されているため,まずは,木の次数がどの程度のものなら同じような証明でそれが示されるのかを確認する.その上で,それを改良して,次数が定数,または,可能であれば次数が高々3のグラフに対しても#P困難性を示す.もし,それが証明できれば,これまでの結果とを合わせて論文としてまとめ,国際会議に投稿する. 前年度は,論文としてまとめるまでには研究成果が得られず,論文を国際会議に投稿することはなかった.そのため,旅費として予定していた予算があまった.今年度は,以上のような計画にもとづいて論文を作成して,国際会議に受理されるように努める.そのような場合には,前年度から繰り越された予算を旅費として補填する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度(650(千円)): 書籍:(計算・アルゴリズム関連)(10×3)(成蹊大),書籍(離散数学関連)(10×2)(成蹊大),合計50(千円) 旅費:国内:20(千円)×5,国外:250(千円)×2,合計600(千円)
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