研究課題/領域番号 |
23700028
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
滝沢 寛之 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (70323996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
高性能計算システムの演算性能を飛躍的に向上させる有力なアプローチの一つとして、性能や特長の異なるプロセッサを複数搭載する「システムの複合化」が挙げられる。本研究の目的は、マルチコア/メニーコア時代の標準プログラミングモデルで開発されるアプリケーションを対象として、その高い実行効率と耐故障性を両立する実行時システムを構築することである。現在、異種複数のプロセッサを混載する複合型計算システムの性能を活用するためには、特定のシステム構成を仮定してプログラムを高度に最適化する必要がある。この場合、他のジョブ実行や障害等の影響でシステム構成が仮定と異なった時に、実行効率の著しい低下や実行の中断を引き起こす恐れがある。このため、複合型計算システム中の異種複数のプロセッサを抽象化して適材適所で使い分けることにより、実行効率と耐障害性を高める実行時システムを構築する。平成23年度は、複合型計算システム向け次世代標準プログラミング環境として整備が進んでいるOpenCLを対象とし、OpenCLアプリケーションの高効率化の研究を行った。並列実行可能なタスクを多く含むアプリケーションを、異種複数のプロセッサを利用可能なシステムで実行する場合、それらのタスクを各プロセッサへと適材適所を考慮しながら割当てる必要がある。そのようなタスク割当てを実行時性能予測に基づいて自動化する研究を行い、複数のプロセッサをOpenCLプログラム内では仮想的に一つに見せる技術を提案した。そのようなタスク割当て機構を実装してその有効性を定量的に評価した結果、タスク割当を自動化することによって、システムに依存したコードを書かずに各プロセッサを性能に応じて適切に利用できることが明らかになった。また、そのようなタスク並列性を利用したアプリケーションの開発を支援するための可視化ツールも開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OpenCLでは、コマンドキューという概念を用いてシステム中の他のプロセッサを制御する。コマンドキューは明示的に一つのプロセッサに対応づけられているため、複数のプロセッサを利用するためには複数のコマンドキューを使い分ける必要があった。これに対して、本研究課題では複数のプロセッサを一つのコマンドキューに対応づけることにより、システム構成に依存したコードを記述することなくシステム中に異種複数のプロセッサを利用することを可能としている。これは本研究課題が目的としている、性能可搬性の実現に有効な手段であり、目的達成に向けて大きく進展した点である。一方、研究計画段階では上記のタスク割当て自動化よりも先に実現しようと考えていた、他ノードにあるプロセッサの遠隔利用機能が未だ予備実験の段階にある。それにあわせて検討されている高信頼化の研究も、予備評価を行っている状況である。すなわち、研究計画と比較すると、実施する研究項目の順番が逆になった感があるが、研究計画全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、他ノードにあるプロセッサの遠隔利用機能や、それを有効利用したシステムの高信頼化の研究を重点的に進める予定である。特に大規模システムのチェックポイントリスタートでは、チェックポイントデータをハードディスク等の記憶領域へ書き込む時間が非常に長くなり、シミュレーションの実効性能を著しく低下させてしまう恐れがある。このため、システム内の記憶階層を効果的に利用することによって、チェックポイントデータを低いオーバヘッドで保持することを検討する。その結果として、より低コストで大規模計算システムの信頼性を向上させることができると期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には新しい世代のプロセッサ、特にアクセラレータと呼ばれる種類のプロセッサがいくつか利用可能になることが予定されていることから、それらを用いた性能評価のための計算システムを購入することを計画している。また、研究期間の最終年度であることから、動向調査や研究成果報告のために海外出張旅費に研究費を多く充てることを計画している。
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