研究課題/領域番号 |
23700032
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
大山 恵弘 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (10361536)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハイパバイザ / 仮想マシンモニタ / 仮想化 / OS |
研究概要 |
メッセージ表示と知的所有権保護の2つの新しい応用のためのプロトタイプシステムを開発する作業を進めた.クラウド分野やセキュリティ分野における新しい応用を開拓する作業も並行して行っている.メッセージ表示については,既存のハイパバイザであるBitVisorおよびKVMを改造する形で,プロトタイプの実装を進めた.メッセージ表示の用途としては広告表示をまず考えている.行ったことは以下の通りである.第一に,広告を表示するタイミングや場所を賢く判断する技術を開発した.第二に,ユーザに広告の印象を強く与えるために,広告の文字や画像を移動させながら表示する技術を開発した.第三に,ユーザの入力や操作に合わせて,適切な広告を表示する技術を開発した.第四に,実装したシステムが実行時間に与える影響を測定する予備実験を行った.知的所有権保護に関しては,Linuxカーネルの命令列を秘密部と公開部に分離し,ハイパバイザ上で実行できるようにするシステムの実装を進めた.ハイパバイザの管理者は秘密部の情報をハイパバイザに格納し,ハイパバイザ上で動作するOSからは隠蔽する.OSが秘密部の命令列を実行する必要がある際には,自動的にOSからハイパバイザへと制御が遷移し,ハイパバイザがOSの代わりに命令を実行する.分離に際しては,命令単位で命令を選択して秘密にする方式と,ブロック単位で秘密にする方式の両方を実装し,性能などを比較した.対象とするハイパバイザは,まずは,自身で一から開発した小さい実験用のものとしているが,将来を見据えて,世界中で広く用いられているハイパバイザであるKVMに移行する作業を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」に記載されていた,オペレーティングシステム(OS)に依存しない形で画面にメッセージを表示するという応用と,OSのコードに含まれる知的所有権を保護するという応用の2つに関して,順調に技術開発が進んでいる.両技術を実装したプロトタイプが既に稼働し,有用性や性能に関する評価が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,前年度のプロトタイプシステム開発で得られた知見をもとに,実装中のシステムの完成度を上げて実用性をさらに向上させる.メッセージ表示に関しては,BitVisor版とKVM版の両方に関して開発作業を継続する.前年度までに研究した,適切な場所への広告の表示,広告の移動,ユーザ入力に合わせた適切な広告の表示などの技術をさらに洗練させることを目指す.広告以外への,たとえば災害警報や仕事効率化などへの応用の開拓も同時に行う.知的所有権保護に関しては,KVMを利用した実装をさらに進める.ある程度完成度が高まったら,ベンチマークプログラムにより,性能への影響を測定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じたのは,研究に必要な物品を安価に調達できたことなどにより,物品費が当初見積もりよりも低く抑えられたことなどによる.この研究費は,翌年度以降に請求する研究費と合わせて,PCやPC周辺機器などの物品の購入に充当することを計画している.
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