研究課題/領域番号 |
23700038
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高木 智彦 香川大学, 工学部, 助教 (70509124)
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キーワード | ソフトウェアテスト |
研究概要 |
本研究は、ソフトウェア信頼性を効果的に改善するために、限られた工数の中でできるだけ多くの重要な欠陥を発見するための新たなソフトウェアテスト法を開発し、その有効性を評価するというものである。欠陥を効果的に発見するには、テストケース(テストすべき項目)をいかにして設計するかが鍵となる。本研究では、まずテスト対象ソフトウェアの期待される振る舞いと使われ方を表す拡張運用プロファイルと呼ばれるモデルを提案した。拡張運用プロファイルは、確率付き有限状態機械である従来の運用プロファイルに対して、各遷移に必要とする工数の情報を付加するとともに、状態や遷移における詳細な動作、遷移の発火条件、イベントパラメータなどを記述できるようにしたものである。これによって、複雑な振る舞いを行うソフトウェアに対しても本手法を効果的に適用できるようになった。そして、この拡張運用プロファイルに基づいて、限られた工数の中で実行可能で、ソフトウェア信頼性に深刻な影響を与える欠陥を重点的に発見し、かつ、全体をできるだけ網羅するようなテストケースを選りすぐって生成するアルゴリズムを構築した。このアルゴリズムは遺伝的アルゴリズムを応用したもので、テスト担当者はアルゴリズムのパラメータを調節することによって、個々の開発プロジェクトに応じたテストケースを生成できる。本研究では、本手法を実装したツールを開発し、商用ソフトウェアに試験適用した。その結果、従来の運用プロファイルを用いたテスト法と比較して有効であることを確認した。本研究の成果は、学術雑誌や学術シンポジウムで発表した。また、次年度に向けて、本手法の新たな課題を明らかにし、その解決方法について検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、拡張運用プロファイルおよびテストケース生成アルゴリズムをさらに拡張し、本手法の有効性を高めることができた。そしてその成果を、学術雑誌や学術シンポジウムで発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画にしたがって研究を推進する。すなわち、(1)拡張運用プロファイルの更なる拡張、(2)テストケース生成アルゴリズムの拡張、(3)ツールの拡張、(4)適用実験、(5)評価を行い、その結果を学術雑誌や学術シンポジウムで発表する予定である。(1)については、並行動作を扱うことができるようにプロダクトマシン(並行動作する複数の有限状態機械を合成して一つにまとめた有限状態機械)を導入したり、入力と出力の間の複雑な論理関係を扱うことができるように決定表を導入したりすることなどを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は研究成果の発表を国際会議で行うことを想定していたが、予定よりも研究に進展があり学術雑誌で発表することにしたため、次年度使用予定の研究費が生じた。研究協力者との打ち合わせや研究成果発表のための旅費、学術シンポジウム参加費、論文掲載料に充てる予定である。次年度請求の研究費については、当初計画に基づいて使用する予定である。
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