研究概要 |
本研究課題は,階層型領域分割法基づく大規模電磁界解析手法の高速化検討,および電磁環境問題への適用に関する研究である。本研究において,領域分割法に適した前処理として知られるBalancing Domain Decomposition (BDD)前処理の電磁界問題への適用検討をおこなった。BDDは,解析領域に対して粗いグリッドを用いて領域間のつり合い問題の収束性を向上させるマルチグリッド法の考え方を前処理として適用する方法であり,Numann問題を解いた時の解に粗いグリッドによる修正解を加えるアルゴリズムである。この粗いグリッドを辺要素関数空間が持つ性質を満たすように構成する必要があり,本研究において検討を進めた。しかしながら,高速化効果を示すにはいたらず,今後引き続き検討を進めることとする。 また,BDDとは異なるアプローチとして,インターフェース反復計算に対角スケーリング前処理付きConjugate Orthogonal Conjugate Residual (COCR)法を適用し,約2,000万複素数自由度の問題において33%の計算時間が削減され,高速化効果が認められた.手法の実証として一般生活環境における電磁環境問題の一つである通勤電車内において携帯電話を使用した際の環境影響を評価することを想定し,環境を丸ごとモデル化した。解くべき数値モデルは,複数材料によって構成され複雑形状を有する大規模モデルであり一般に数値解を得ることは困難であるが,本研究において開発した手法によって解析可能であることを示した.また,人体内部の電磁界暴露計算手法の数値例を示すため,(独)情報通信研究機構(NICT)において公開されている数値人体モデルデータベースに基づき有限要素数値モデルを作成し,本数値モデルを用いた解析を行い,計算に成功した。
|