研究課題/領域番号 |
23700047
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
日高 宗一郎 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 助教 (70321578)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プログラム言語論 / プログラミングパラダイム / プログラム処理系 / 双方向グラフ変換 / 関数型言語 |
研究概要 |
研究目的のうち、変換処理速度については、処理速度の向上のためのプログラム変換技術により、どのような変換が正規形(意味的にでプログラム変換に的した変換記述形式)に持ち込めるか、どのような場合に完全に合成変換における中間データを削除出来るかをより明確にした。また、最適化変換のうちコスト増大のある危険性のあるものとその性質、プログラム変換自体の決定性についても考究した。プログラム変換による速度低下に関しても更に詳細に分析を行い、プログラム変換等に関する伝統的な会議で発表を行った。実用面でのスケーラビリティに関する予備的な考察、その他応用範囲拡大に向けたソフトウェア工学におけるモデル変換の基盤技術としてソフトウェア工学の自動化に関するトップレベルの会議でポスター発表を行った。双方向変換システム全体像の分析に関しても、モデル変換の研究グループと共同でモデルとケーススタディの精緻化を行った。更に、変換の記述能力向上に関して、既存の単方向だが記述能力の高いモデル変換言語との相補的な統合に向けた道筋についても明らかにした。更に、双方向変換可能なデータに関する記述能力の向上に向けて、共著で順序の導入、bisimulationの概念の再定義、正規形の発見、正規化アルゴリズムの提案を行い、関数プログラミングのトップレベルの会議に投稿し、また解釈実行形の核を実装し提案方式の有効性を確認し、従来のset semanticsを含めた一般化への課題を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、双方向グラフ変換の枠組みについて、変換処理速度、双方向変換として満たすべき性質、記述能力、受容する更新の種類について強化を行い、それによる応用範囲の拡大を目指している。そのうち、変換処理速度については、プログラム変換による最適化の過程で場合により見られる速度低下の要因などについても更に詳しく調査してプログラミング言語の伝統的な国際会議で発表した。記述能力に関しては枝の順序の導入の影響について正規形の有力な候補とそれへの帰着の方式を提案し、それを含む論文を共著でプログラミングに関する主要な国際会議へ投稿している。また応用範囲の拡大については、ソフトウェア工学の主要な国際会議でポスター発表を行っており、モデルとコードの協調的発展について更に別のトップレベルの会議でフルペーパーとして共著で採択されている。研究実施計画全体のうち、達成順に前後はあるものの、全体として概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
異なるデータモデル間の相互変換に関して、順序等を考慮したグラフとそうでないグラフの統合的な扱いについて実装の側面を考慮して引き続き研究を遂行する。また、応用範囲の拡大に向けて、ソフトウェア工学分野におけるモデル駆動開発を念頭に共同研究に取り組む。双方向計算記述能力の補完手法についても、既存の単方向変換言語の研究グループと協力しながら既存の単方向変換言語と相補的な枠組みの提案を目指す。その他、型解析駆動による変換の簡略化変換規則の解明とその証明、影響範囲解析(変換元および変換先の、ある部分を変更した時にそれがどの段階迄影響するかの解明)、更に実装面についても、トレース情報の圧縮、外部化による相互運用性の向上、スケーラビリティ等の性能向上の評価について計画の通りに進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究成果の一部の発表を含む海外出張が今年度早々に必要であることが確定したため、次年度使用額について主にその旅費に充てる予定である。その他の部分については、上記計画を遂行するための共同研究打ち合わせ、成果発表等旅費、論文掲載料、本研究の理論的基盤に密接に関連するグラフ理論やデータベースプログラミングに関する書籍、実装に伴い必要となる機材の購入等に充てる予定である。
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