研究課題
今年度は、双方向変換可能なデータに関する記述能力の向上に向けて、昨年度不採択になった単方向グラフ変換論文に関して査読コメントを反映して共同で改訂を重ね、意味論の明確化等を行った。具体的なプログラミング例、記述能力の説明も補った。特に、枝間への順序導入に固有の問題点がユーザレベルにどう影響するかについて、select queryで必然的に生じるε枝の循環やbisimulation genericityとの関係などを明らかにした。実装面では、λ計算への埋め込みとして構造再帰の部分を含め、独立したインタープリタを実装した。グラフ双方向変換に基づき提供される双方向変換フレームワークについては、トレーサビリティ概念の補強、双方向 contractionの説明の強化、他の双方向変換アプローチとの区別の明確化、緩和された双方向的性質の説明の強化、表面言語による高次の記述と下位レベル言語との間の変換の説明の強化等を行った。応用範囲の拡大については、単方向モデル変換言語との統合に向けてデータモデルの接続部分の仕様等を明確化、特に双模倣と同型性のギャップについて明確化を図った。他にも共同研究先の滞在中にトレースだけに頼る方法等、様々な方向性を検討した。スキーマを使ったグラフからXMIファイルの復元の実装も行っている。また、インターンシップ生と共同で合成生物学におけるモデルの共同開発事例への適用や、モデル検査結果のユーザレベルフィードバック事例への適用を行った。
2: おおむね順調に進展している
上記本年度の各実績について、研究項目毎の進捗の相違はあるものの、基礎に関する部分については国内シンポジウムで採択され、その改訂版が更にトップレベルの国際会議で査読中である。グラフ双方向変換フレームワーク全体についても、国際雑誌の、強固な編集委員で編成された双方向プログラミング等に関する特集号に採択されている。また応用範囲の拡大についても、共著論文が双方向変換に関する重要なワークショップに発表論文として、またその予稿集に基づく雑誌論文にも採択されるなど、研究成果の公表も順調に進んでいる。応用分野に密接に関連するモデル変換分野に関する共著の解説記事も採択が決定している。昨年度採択決定して今年度発表された共著のICSE論文に関しても、特別講演として国内シンポジウムで双方向変換部分を中心に紹介することができた。以上、研究実施計画全体のうち、達成順に前後はあるものの、全体として概ね順調に進展していると考える。
双方向変換の既存のアプローチの整理を進めつつ、定数補関数や多相性の利用等の利用可能なアプローチの取り込みについて検討する。また、異なるデータモデル間の相互変換に関して、順序等を考慮したグラフとそうでないグラフの統合的な扱いについて実装の側面を考慮して引き続き研究を遂行する。また、応用範囲の拡大を進め、ソフトウェア工学分野におけるモデル駆動開発の共同研究を更に推進する。その過程で、既存のグラフ変換のアプローチに対する関数プログラミング的アプローチの利害得失を明確化する。双方向計算記述能力の補完手法についても、既存の単方向変換言語の研究グループと引き続き協力しながら既存の単方向変換言語と相補的な枠組みの提案を目指す。その他、型解析駆動による変換の簡略化変換規則の解明とその証明、影響範囲解析、実装面についても、トレース情報の最適化、外部化による相互運用性の向上、スケーラビリティ等の性能向上の評価について、計画を随時見直しつつ進めていく予定である。
今年度の研究成果の一部の発表を含むソフトウェア工学分野への応用に関する発表にかかわる国際ワークショップの出席のための次年度前半の海外出張が確定したため、次年度使用額についてその旅費等に充当する予定である。また双方向変換、単方向モデル変換言語の双方向化に関する共同研究者の招聘または訪問にも利用予定である。その他、双方向変換の応用に関する国内セミナー出席のための出張も予定されている他、投稿中の研究成果が採択された場合、関数プログラミングに関する国際会議出席のための海外出張にも充てる。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)
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