研究課題
本年度は、細粒度パイプライン演算システムの応用例として、並列検索機能を持つCAM(Content-Addressable Memory)に関する研究を継続した。まずは、従来CMOS回路による揮発性のCAMにおいて、各ワード回路に細粒度パイプライン構成を適用し、新たに考案した検索順序変更と共に各ワード回路を独立に動作させる検索方式により低電力化と大幅な高速化を実現した。また、非同期パイプライン構成により更なる低電力化と高速化を実現した。次に、不揮発性の磁気トンネル接合 (Magnetic Tunnel Junction: MTJ) 素子を用いたCAMを取り上げた。MTJ素子はMOSトランジスタ上部に3次元積層できるため、CAMの基本コンポーネントであるセル回路をコンパクトに構成できる。また、不揮発記憶機能と論理演算機能を一体化してセル回路を構成できるため、素子数低減により更なるコンパクト化が可能である。加えて、MTJ素子は宇宙線によるソフトエラーに対して高い耐性があることが知られている。このような特長を有するMTJ素子ベースCAMにおいて、CMOS回路部分に起因してMTJ素子のデータが反転しないように、MTJ素子レベルの多重化あるいはトランジスタを含めた回路レベルの多重化による新規セル回路を考案した。ソフトエラーだけでなく、デバイス特性ばらつきによるエラー対策としてMTJ素子の多重化による新規セル回路も考案した。このようなMTJ素子ベース不揮発CAMに細粒度パイプラインとパワーゲーティングを適用して、低電力化、高速化、コンパクト化に加え、高信頼化を実現した。本研究では、検索処理に特化したCAMを取り上げたが、セル回路の演算機能を任意に設定した不揮発機能ゲートで構成することで、様々な演算処理を可能にする高性能なメモリベースコンピューティングLSIの実現が期待できる。
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