研究課題/領域番号 |
23700056
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大下 福仁 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (20362650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 異種並列計算環境 / スケジューリング / 多組織グリッド / 分散システム / モバイルエージェント / アルゴリズム |
研究概要 |
本研究では、多数のタスクを並列計算環境で実行する際に、消費電力を低く抑えながら計算時間を削減するスケジューリング手法の開発を目指す。とくに、本研究では、特性の異なる計算機を組み合わせた異種並列計算環境において、上記の性質をもつスケジューリング手法の開発を目指す。平成23年度の研究成果は以下の通りである。(a) 多組織計算環境におけるスケジューリング手法の開発:多組織計算環境とは、複数の組織が計算機を提供することで構築される、一つの巨大な異種並列計算環境のことである。複数の組織が協力することで、性能面、電力面の両方において、効率的にタスクを実行することが期待できる。しかし、複数の組織に協力をさせるためには、それぞれの組織に対して利益を与える必要がある。本研究では、すべての組織に対して一定の利益を保証しながら、計算時間を短くするスケジューリング手法を提案した。(b) 通信量を抑えたモバイルエージェントアルゴリズムの開発:効率的なスケジューリングを実現するためには、リアルタイムにタスクの実行状況を収集し、それに対応してタスクの割り当てを行う必要がある。タスクの実行状況を効率的に収集する手法として、ネットワークを自律的に移動するモバイルエージェントを用いる方法がある。本研究では、情報交換を行うためにモバイルエージェントを一ヶ所へ集合させる集合問題、効率的に情報収集を行うためにモバイルエージェントをネットワークに均等に配置させる均一配置問題について効率的なアルゴリズムを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、(a)異種並列計算環境における消費電力モデルの構築、(b)異種並列計算環境における低電力スケジューリング手法の開発を目標としていた。このうち、(a)については、既存研究でいくつか消費電力モデルが提案されていたため、それを用いることにした。主に(b)に取り組んだ結果、現時点で低電力を実現することはできていないものの、異種並列計算環境において効率的なスケジューリング手法を提案することができた。この成果は、国内学会で発表しており、また国際論文誌への採録も決定している。また、大規模な異種並列計算環境では、計算環境の状況を効率的に収集し、管理する必要がある。そのため、これをモバイルエージェントを用いて実現する手法を検討した。その成果として、効率的なモバイルエージェントアルゴリズムを提案した。これらの成果は、国内学会で発表しており、国際会議への採録も決定している。上記の2点について、十分な数の成果を発表しており、現時点ではおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度から引き続き、以下の2点に取り組む。(a)異種並列計算環境における低電力スケジューリング手法の開発:平成23年度に提案したスケジューリング手法に対して、消費電力モデルを取り入れることで低電力スケジューリング手法を開発する。具体的には、組織が提供する計算機の消費電力を抑えることで組織に利益を与え、その条件のもとでタスクの実行時間を最小化する。(b)大規模並列計算環境の管理手法の開発:大規模並列計算環境において計算状況を効率的に収集・管理するための手法を開発する。具体的には、モバイルエージェントをはじめとした大規模分散システムに対するアルゴリズムの開発を行う。平成23年度に開発したアルゴリズムは、適用できるネットワークが限定的であったため、その適用範囲を拡張する。開発した手法の評価は、理論的解析、シミュレーション実験によって行う。得られた結果について、国内外で成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費120万円の使用計画は以下のとおりである。(a)設備備品費 40万円:シミュレーション実験に用いる計算機を購入する。(b)消耗品費 10万円:論文別刷代、計算機消耗品に対して使用する。(c)旅費 70万円:国内成果発表2回、国外成果発表2回に対して使用する。
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