研究課題/領域番号 |
23700056
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大下 福仁 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (20362650)
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キーワード | 異種並列計算環境 / 分散システム / モバイルエージェント / アルゴリズム / 自己安定システム |
研究概要 |
本研究では、多数のタスクを並列計算で実行する際に、消費電力を低く抑えながら計算時間を削減するスケジューリング手法の開発を目指す。平成24年度は、並列計算の実行環境として考えられる大規模分散システムにおいて、通信量を削減することで消費電力の削減を実現するアルゴリズムを多数提案した。具体的な平成24年度の研究成果は以下の通りである。 (a) 通信量を抑えたモバイルエージェントアルゴリズムの開発:効率的なスケジューリングを実現するためには、リアルタイムにタスクの実行状況を収集し、それに対応してタスクの割当を行うことが重要である。本研究では、これを実現するために、計算機ネットワーク中を自律的に移動するモバイルエージェントを利用する。モバイルエージェント間の情報交換のためには、モバイルエージェントを一ヶ所へ集める集合問題を解く必要がある。平成23年度には、この集合問題に対して効率的なアルゴリズムを提案した。平成24年度は、このアルゴリズムの適用範囲を広げ、必要メモリ量、必要移動量等の効率を改善した。 (b) 自己安定システムにおける通信効率化アルゴリズムの開発:自己安定システムとは、メモリ書き換え等の一時故障が発生しても正しく動作を続けるシステムであり、故障の発生が避けられない大規模分散システムへの応用が期待できる。しかし、自己安定システムには、故障へ対応するために常時通信が必要であるという欠点があった。本研究では、間欠的に 通信をスケジュールすることで、自己安定システムの特性を保ちながら通信量を大きく削減するアルゴリズムを提案した。 (c) 格子型ネットワークにおける通信経路の最適化アルゴリズムの開発:格子状の通信ネットワークにおいて、任意の形状の経路を自律分散的に最小の経路へ変換するアルゴリズムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、異種並列計算環境における低電力スケジューリング手法の開発を目標として、計算タスクの実行、通信の2つの面から消費電力を削減するアルゴリズムの開発に取り組んだ。 (1) 計算タスクの面については、計算機に故障が発生しうる状況において、計算機の異種性を考慮することで消費電力を削減するアルゴリズムの開発に取り組んだ。アルゴリズムの開発の途中であり、平成24年度は成果報告を行っていない。 (2) 通信の面については、並列計算環境の一つである大規模分散システムについて通信量を削減するアルゴリズムを多数開発した。モバイルエージェント、自己安定システムに対するアルゴリズムは、国内学会、国際会議で発表を実施しており、国際論文誌への採録も決定している。また、格子型ネットワークに対するアルゴリズムは、国内学会で発表しており、本分野で最高峰の国際会議への採録が決定している。 以上より、計算タスクの面について多少の遅れが生じているが、通信の面について十分な数の成果を発表しており、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度から引き続き、計算タスクの実行、通信のそれぞれに対して消費電力を削減するアルゴリズムを開発する。 (1) 計算タスクの面については、平成24年度に実施した研究を引き続き実施し、計算機の異種性を考慮して消費電力を削減するアルゴリズムを開発する。 (2) 通信の面については、平成24年度に開発したモバイルエージェント、自己安定システムに対するアルゴリズムの拡張を考える。モバイルエージェントに関しては、現在のアルゴリズムの適用範囲がリング状のネットワークに限定されているため、それを任意の形状のネットワークに拡張していく。自己安定システムに関しては、通信のみのスケジュールを考えて消費電力を削減していたが、計算タスクのスケジュールも考慮することでより大きく消費電力を削減する。 開発した手法の評価は、理論的解析、シミュレーション実験によって行う。得られた結果について、国内外で成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費80万円の使用計画は以下の通りである。 (a)設備備品費 20万円:シミュレーション実験に用いる計算機を購入する。 (b)旅費 60万円:国内成果発表2回、国外成果発表2回に対して使用する。
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