研究課題/領域番号 |
23700058
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
市川 昊平 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (90511676)
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キーワード | 仮想クラスタ / 広域計算環境 / クラウドコンピューティング / オーバレイネットワーク / OpenFlow / 国際情報交換 / アメリカ |
研究概要 |
本申請研究は,複数サイトの計算資源からなる仮想的なクラスタ環境(マルチサイト仮想クラスタ)の柔軟かつスケーラブルな構築手法の確立を目的とし,従来の中央集中管理型のクラスタ構成をとらない分散制御型の仮想クラスタ構築・管理機構を実現することを目指して実施している. 本申請研究は,申請時には,オーバレイネットワークを提供する仕組みとして, P2P技術をベースにしたものを想定していたが,近年の最新技術開発の動向に合わせ,Software-Defined Network (SDN) 技術を取り入れることにし,OpenFlowを用いたオーバレイネットワーク構築手法を取り入れた.2年目にあたる当該年度は,前年度に引き続き,このOpenFlowをベースにしたオーバレイネットワーク構築とその上で動作する仮想クラスタ構築・管理機構の研究開発に従事した.本研究の成果は,情報処理学会の論文誌にも論文が採択され,また前年度に引き続き,グリッド・クラウドに関する国際的な研究コミュニティPRAGMA(Pacific Rim Applications and Grid Middleware Assembly)により運営される広域分散計算の実験環境(PRAGMA テストベッド)において,4カ国5拠点の組織をOpenFlowベースのオーバレイネットワークで結合し,広域分散計算の実証実験を実施することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では,研究開発の成果物である分散制御型の広域仮想クラスタ構築技術を,国際的な研究コミュニティにより運営される広域分散計算の実験環境(PRAGMA テストベッド)にて実証実験することまでを目的とし,1)オーバレイネットワークの構築,2)クラスタの分散管理機能の構築,3)分散制御型ジョブ管理機能の構築,4)実証実験の実施という4つのマイルストーンを設定して進めている.前年度までに1)を完了し,2)に取り掛かっていた.ただし,研究実績に記載した通り,当初の計画を変更し,P2P型のオーバレイネットワーク構築に加えて,OpenFlow技術を取り入れた形での再構築を進めているため,2),3)の部分の完全な実装は完了していない.4)の実証実験に関しては,現在利用可能なプロトタイプを用いて可能な実験は先取りして進めてきた経緯があり,おおむね予定通りである.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度までの研究において,複数サイトの計算資源からなる仮想的なクラスタ環境を柔軟かつスケーラブルに構築・管理する分散制御型の仮想クラスタ構築・管理機構が実証できた.本申請研究では,当初の研究計画にはないSDNを実現する新しいネットワーク技術であるOpenFlowを適用した手法を取り入れた技術開発を実施してきた.現在はこの変更によって生じた実装を完了するため引き続き研究開発を実施している段階にある. また,OpenFlowを本申請研究に取り入れる過程で,この新しいネットワーク技術による柔軟なネットワーク制御の可能性に現在着目している.OpenFlow技術により,ネットワークのポリシーや挙動自体を完全にソフトウェアから制御可能となる.本申請研究の今後の展望として,このOpenFlow技術の機能を活用した高機能かつ高性能な広域分散計算環境の実現が可能であると考えられる.
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次年度の研究費の使用計画 |
本申請研究では,当初の研究計画にはないSDNを実現する新しいネットワーク技術であるOpenFlowを適用した手法を取り入れた技術開発を実施してきた.そのため,当初の計画で実施する予定であった一部の研究開発が一部完了していない.この部分の実装とシンポジウムでの発表を次年度に行う予定とし,次年度に繰り越した予算をその経費に充てることとしたい.
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