本研究は、複数サイトの計算資源からなる仮想的なクラスタ環境(マルチサイト仮想クラスタ)の柔軟かつスケーラブルな構築手法の確立を目的とし、従来の中央集中管理型のクラスタ構成をとらない分散制御型の仮想クラスタ構築・管理機構を実現することを目指して実施している。 本研究は、申請時には、オーバレイネットワークを提供する仕組みとして、 P2P技術をベースにしたものを想定していたが、近年の最新技術開発の動向に合わせ、Software-Defined Network (SDN) 技術を取り入れることにし、OpenFlowを用いたオーバレイネットワーク構築手法を取り入れた。本研究では、このSDN技術の取り入れにともなって、当初の計画を変更し、平成24年度終了予定の研究を平成25年度も引き続き実施した。 本年度は、前年度に引き続き、グリッド・クラウドに関する国際的な研究コミュニティPRAGMA(Pacific Rim Applications and Grid Middleware Assembly)により運営される広域分散計算の実験環境(PRAGMA テストベッド)において、本研究で構築した広域仮想クラスタシステム上において実際のアプリケーションを用いた実証実験に成功した。具体的には、米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の教員との連携により、創薬における候補薬物を探索するフェーズで使用されるドッキングスクリーニングを実施するアプリケーションを本研究で開発した広域クラスタ上で実行し、複数拠点の計算機を同時に利用した計算が可能であることを確認した。
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