人命に関わる機器に使用されるLSIは、高度な品質保証技術が必要である。LSIの高速化や大規模化によりLSIの性能は格段に向上したが、一方で品質保証を極めて困難にしている。本研究では、LSI品質を保証するために行う、信号伝搬速度検査の技術向上に関する研究を行った。 2011年度には、LSI内部の正確にかつ網羅的に検査するための、信号伝搬経路選択技術を向上させることに成功した。信号伝搬速度を正確に検査する技術と、信号伝搬速度を網羅的に検査する技術を、検査時間の増加を最小限に抑えて組み合わせることを可能にした。検査時間の増加は、LSIの製造コスト増加に直結するため、非常に有用な技術といえる。 2012年度には、海外研究グループが同様の研究内容を国際会議で発表しており、本研究のテーマが重要であることを示している。技術的には、本研究より最適な経路を選択可能であるが、経路選択の処理時間が大きい。そのため本研究の今後の進め方次第で優位性を持つことが可能であるが、2012年度中に優位性を持つには至らなかった。しかし、本研究では、実験用プログラムのような小規模なソフトウェアを用いて信号伝搬経路の可視化に成功し、回路内部における網羅性を確認することを可能にした。高額なソフトウェアを用いる必要がなく、経済的にも非常に有用だと考えられる。 研究成果は、2011年に東京で開かれた国内研究会、インドでの査読有の国際的ワークショップ、2013年にはオーストリアでの国際的ワークショップで発表した。
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