昨年度までに開発した暗号処理プロセッサDS-REMIEは2048ビットのRSA暗号で使われるモンゴメリ乗算において,Intex Xeonプロセッサと比較して21倍の性能を達成できていた.しかしながら,本研究を進める中で,当初予定していなかった冗長radix演算の採用により,小面積性を保ちつつ高性能化を達成できる可能性があることが分かった.そのため,本年度では冗長radix演算の採用による性能,面積面での改善の可能性を探索した.一般によく知られている冗長演算では1ビット毎に冗長ビットを付加するため,ビット幅が通常演算の2倍必要になり,その結果,演算器の面積も2倍になってしまうのだが,冗長radix演算では,数ビット単位で冗長ビットを付加するため,面積増加を抑えたまま,演算器を冗長化でき,ビット長が長い多倍長演算でのキャリー伝搬を防ぐ事ができる.その結果,昨年度提案したDS-REMIEプロセッサの性能を1.7倍に,演算器数を66%に削減できることが分かった.ただし冗長radix演算の採用による演算器の面積増加は考慮できていないため,プロセッサ全体での面積の削減効果は66%より悪化すると予測される. また,実際のボードを用いたデモ環境を構築するために,PCから送られてくるデータをデモボード上のDS-REMIEプロセッサに供給する制御用CPUを使用した環境を構築した.ここで制御用CPUを新規に開発するには開発時間がかかるため,市販のマイコンを用いた.
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