研究課題/領域番号 |
23700072
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
策力 木格 電気通信大学, 大学院情報システム学研究科, 助教 (90596230)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 車両アドホックネットワーク / 高度交通システム / マルチホップブロードキャスト / ファジィ論理 / 再送方式 |
研究概要 |
平成23年度には,車両アドホックネットワークを用いた事故などの情報を周囲の車両に効率的かつ高信頼に伝達する高度交通システムのためのマルチホップブロードキャストプロトコルを提案し,コンピュータシミュレーションを用いて提案手法の性能を評価した.提案プロトコルでは,ファジィ論理に基づき車両間距離,車両の移動,無線電波の伝搬特性を柔軟に考慮し情報を中継する最適な車両を定め,さらにデータの紛失を効率の良い再送方式で回復することを特徴とする.コンピュータシミュレーションにより,さまざまなネットワークトポロジにおいて提案プロトコルの性能評価を行い,問題点を見つけて提案プロトコルを改良することを繰りした.シミュレータとしては,オープンソースネットワークシミュレータns-2.34を用いた.また無線電波伝搬モデルと車両移動モデルとしては,既存の高い評価のモデルであるNakagamiモデル(ns-2.34にて提供されている)を用いて,より現実的なフェージングを模擬した.車両移動モデルとして,SUMOとTraNSを利用した.また他の既存のプロトコルと比較しながら,提案プロトコルの改良を行った. 本研究では,相反する性質を持つ複数の評価尺度をファジィ論理により統括させることにより,安定かつ効率的な通信ができることをコンピュータシミュレーションにより検証した.ファジィ論理を用いたブロードキャストプロトコルの品質向上についての研究は,柔軟性の高い運転支援システムの実現にとって非常に重要な一歩であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度には,当初の計画通り,ファジィ論理を用いた中継ノード選択機能と再送機能を持つマルチホップブロードキャストプロトコルの提案とコンピュータシミュレーションによる評価を行った.ファジィ論理に用いたファジィルール,メンバシップ関数,設定パラメータの最適化と,効率の良い再送方式に焦点をあて,より現実的な無線電波伝搬モデル,車両移動モデルを用いて,提案プロトコルの評価と改善を行った.より現実的なコンピュータシミュレーションにより提案手法の有効性を示した.また平成24年度の予定である実証実験の具体的な内容について検討を行った.そのために,研究が当初の計画通り進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には,実ネットワーク環境にて提案プロトコルの性能を評価し,提案プロトコルの改良を行う.提案プロトコルを実無線デバイスにて実装して,実無線環境での提案プロトコルの動作を確認する.さらに無線装置を車に搭載させることにより,実車両アドホックネットワークにおける動作確認をする.具体的には,USRP2とGNU Radioを利用してプロトコルの実装を行う.ここで,USRP2は汎用信号処理オープンハードウェアである.Gnu RadioはUSRP2の無線通信方式を切り替えることを可能にするソフトウェア開発ツールキットである.USRP2とGNU Radioを利用することにより,無線通信方式を物理層まで変更することができる.USRP2とGNU Radioを連携させることにより,提案プロトコルを実無線環境にて評価しながら,実環境における各層で連携することによる最適な通信方式を見つけることを目標とする. 効果的に研究を進めるため,またはコストを削減するために,まず車なしで実無線ネットワークを構築して,提案プロトコルの評価と改良を十分行う.その次第,車両に無線装置(USRP2)を搭載させ,車両アドホックネットワークにて実証検証を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には,実ネットワーク環境にて提案プロトコルの性能を評価し,提案プロトコルの改良を行うことを予定している.研究費の使用は,実験に必要な物品(リアルタイムデータ解析用ノートPCなど),消耗品(実験用車レンタル費),研究成果の発表に使用することを予定している.
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