平成25年度は,(1) VANETのノードの移動特性を考慮したメッセージルーティングプロトコルのプリミティブの開発,(2) (1)のプロトコルを活用するモバイルデータオフローディングフレームワークの提案を行った.また,(3) VANETのノードとして二輪車が含まれることを考慮した新しいモビリティモデルの検証,(4) GPSにより測位している複数車両で協調して測位精度を向上させる技術についての研究を行った. (1)(2) については,VANET を携帯電話網のデータオフローディングに使うフレームワークを提案した.各通信キャリアが設置するWiFiスポットエリア外から送受信されるデータをVANETを用いてそれに媒介する仕組みを考案した.携帯電話網の基地局負荷に応じて,また,送受信したいデータの性質からそのデータの通信遅延時間の許容量を把握し,送信時間を遅らせたり,VANETによって隣の基地局のエリアとの通信を媒介したりといった方式をまとめた.これらの研究業績については,国際会議で1件,国内の研究会で1件発表した. (3) については,東京大学空間情報科学センタの「人の流れプロジェクト」が提供するモビリティデータから二輪車の運動を抜き出して四輪車との違いを考察した.また二輪車の車載装置を開発し,実車からのデータ収集も行っている.収集したデータは手作業ではなく,自動で意味のあるデータとして統計化されるシステムも合わせて検討した.これらの研究業績は,国際会議で1件,国内の研究会で2件発表した. (4) については,従来のGPSの測量用の協調測位とは異なり,一般ユーザの端末間で無線通信網を用いて,情報共有することで測位精度を向上する仕組みを提案した.この研究業績は,国際会議で1件,国内の研究会で3件発表した.なお,国内の研究会で発表したものが,平成25年優秀論文賞を受賞した.
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