研究課題
スマートフォンを始め無線LANを利用可能な携帯端末は爆発的に普及しており,これら携帯端末の現在位置を低コストかつ高精度に推定することで,ユーザの利便性向上のみならず,人の分布を考慮したエネルギー削減方式の考案や都市計画,災害時避難計画などへの応用が期待されている.位置推定法では他端末から受信した電波の強度を用いるが,端末によって同一条件でも電波強度が異なる問題が報告されている.そこで本研究では無線LANを利用した位置推定法において,導入・維持コストが不要で端末の多様性による精度低下を抑える手法の考案を目標とする.このため,本研究では電波強度を直接位置推定に用いず,端末同士または端末と基地局間の通信の可否を利用して位置を推定するレンジフリー位置推定法を考案した.提案手法では各端末に対して最大電波到達距離のみを仮定して,互いに通信できた端末間の距離は最大電波到達距離以下であるという制約を利用して,端末の位置を絞り込む.一般に無線LANを利用した位置推定法では基地局からの電波強度に基づき端末の位置推定が行われるが,提案手法では最大電波到達距離を緩やかな制約として利用する.従って電波強度を用いた手法と比べて精度が劣る場合があるが,端末の多様性に対する堅牢性は向上する.制約の緩和による精度低下を補うため,互いに通信していない端末間の距離は最大電波到達距離よりも大きいという制約,地図情報に基づく移動可能領域の制約,ならびに最大移動速度を仮定し,一定時間内に移動可能な範囲に対する制約を利用することで精度の向上を図っている.性能評価の結果,平均位置誤差は最大無線到達距離の70%程度であることが分かり,提案手法の有効性が確認された.本研究の成果はIEEE Transactions on Mobile Computingなどの著名な国際論文誌などで発表を行っており,高い評価を得ている.
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情報処理学会論文誌
巻: Vol.55, No.1 ページ: 389-398
IEEE Transactions on Mobile Computing
巻: Vol.12, No.5 ページ: 1009-1022
10.1109/TMC.2012.86