本研究課題では安全で快適な交通環境の実現を目的とした車載機器向け情報通信プラットフォームに適した通信方式の設計を目的として研究を行った。現在、車載機器用の情報ネットワークは、用途ごとに様々な方式が開発され、光ビーコンやDSRCといった一部の方式は既に実用化されている。これらの通信方式を用途ごとに使い分けるだけではなく、互いに補完し合うことでより効率的なネットワーク環境を実現できる。組み合わせて利用することを前提とする新たな通信プロトコルなどを検討し、シミュレーションによりその性能を評価した。 具体的には、主に新規情報の取得に携帯電話通信を用い、その情報を近隣の車両と車車間通信を用いて共有するプロトコルを新たに設計し、シミュレータ上で性能を評価した。このプロトコルでは自車を中心とした一定範囲内の情報を携帯電話通信により取得する際に、常にすべての情報を取得するのではなく、ある程度の情報は周辺車両からも受け取れると考え、交通量やその時点での情報把握率に応じて動的に変化させた確率に従って取得することで、効率的に両通信を利用することを目指す。市街地を想定したシナリオにおいて手法性能を評価し、本手法が携帯電話通信のみの場合に比べ、情報の把握率を下げることなく情報を取得でき、かつ通信量を平均的な交通量下で35%ほど軽減できることを確認した。この結果は、情報処理学会DICOMO2012シンポジウムや、同ITS(高度交通システム)研究会などで発表を行った。また車々間通信を用いた情報収集を応用するアプリケーションとしては、集めた情報を用いて効率的に信号制御を行う手法を提案、評価し、その結果は査読付き国際会議15th International IEEE Conference on Intelligent Transportation Systems(ITSC 2012)において発表した。
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