研究課題/領域番号 |
23700084
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
猪俣 敦夫 奈良先端科学技術大学院大学, 総合情報基盤センター, 准教授 (90505869)
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キーワード | 国際情報交換 / フランス |
研究概要 |
本研究では、ITSを対象としたノード間通信における効率よいサービスディスカバリー機構における、より安全な通信手段を提供するセキュリティプロトコルの開発を目指す。ITSでは、その大半を担うノードは自動車であることから、その移動によってネットワーク構成が頻繁に変動してしまい、必要なサービスを短時間時間のうちに低コストであり、正確かつ保証された情報として発見することが難しいだけでなく、ノード、ユーザごとの情報を隠蔽する等プライバシの観点からのセキュリティ機能も有していない。これらの理由から、ネットワーク構成の変化に対応できる安全・安心なサービスディスカバリ機構の実現は急務であり、本研究提案者らがフランス国立情報学自動制御研究所(Institut National de Recherche en Informatique et Automatique:INRIA)と検討を進めてきたITSコミュニケーションアーキテクチャ上で動作するITSアプリケーションのための通信メカニズムにおけるセキュリティ機構として、より効率の良いセキュリティプロトコルを提案し、Android端末上への実装を行い、さらに実機評価を進めている。 当該年度では、通信デバイスの動的な選択および探索範囲の動的な調整においてセキュリティを保証する必要のある情報の整理を行い、その通信方法と認証方法を検討し、効率の良いセキュリティプロトコルの基本仕様を設計した。具体的には、観測者による位置追跡から運転者のプライバシーを保護するため、存在しないダミーの車の位置や速度を送信することで車の密度を増大させる手法を提案した。また、ダミーパケットによるノード密度の増大が位置追跡の成功率に与える効果を確認するため、シミュレーション評価を実施し、提案手法の有用性について確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に示したとおり、通信ノードの動的な選択および探索範囲の動的な調整においてセキュリティを保証する必要のある情報の整理を行い、その通信方法と認証方法を検討し、効率の良い楕円曲線暗号ベースのセキュリティプロトコルの基本仕様の検討を行った。提案手法および実装結果については、それぞれ3つの研究会(DICOMO2012、CSS2012、SCIS2013)にて発表を行った。 Android実装を行った結果については、国際会議(IEEE CCNC2013)に、「TrafficCam: Sharing Traffic Information based on Dynamic IPv6 Multicast Group Assignment using Smartphone Sensors」というタイトルで投稿し、デモ発表を実施した。 さらに、観測者による位置追跡から運転者のプライバシーを保護するため、存在しないダミーの車の位置や速度を送信することで車の密度を増大させる手法を提案し、ITS研究会に論文投稿を行った。本稿では、ダミーパケットによるノード密度の増大が位置追跡の成功率に与える効果を評価するために実施したミュレーション結果の報告を行った。これらの成果を踏まえて、現在、ジャーナル論文誌への投稿を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
既に実施したシミュレーション評価結果を踏まえて、再度Android実装の改良を進める。現時点では、パフォーマンスの面から、ノード数増加に応じたスケーラビリティに対応できていない状況であり、この問題を改善する必要がある。また、研究計画通り、Android上に実装したプロトタイプと実機との連携を行い、フィールド実験を最終年度で実施し、得られた結果の整理及び論文執筆を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
プロトタイプ実装として購入を予定していた機材が、非常に小型かつ安価な機材(Raspberry Pi)が発売されたため、当初の計画よりも大幅に安く購入することができたため、未使用額が生じた。 なお最終年度では、研究計画通り、実機を用いた実験と評価を行うことを目指しており、セキュリティプロトコルの安全性と性能を評価するために、運転者のいらない自動車(自律動作可能な自動車)と次世代のITSに必要な諸機能を装備した自家用自動車を用いた実証実験を実施する。具体的には、プロトタイプをAndroid端末上に実装を行い、上述した自律動作可能な自動車とAndroid端末とを連結し、評価を行う。それらの結果を整理し、国際会議およびジャーナル論文誌の投稿を進める。
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