研究課題/領域番号 |
23700085
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
平田 孝志 東京理科大学, 工学部, 助教 (10510472)
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キーワード | 光ネットワーク / 非線形光学効果 / 信号処理 |
研究概要 |
近年のインターネットの様々なコンテンツの普及に起因する爆発的なトラヒック量の増加に対応するためのネットワーク技術として,光ネットワークが提唱されている.光ネットワークは,ネットワーク内部のスイッチング等の全ての処理を光信号のまま行うことで,中間ノードにおける電気処理のボトルネックを無くし,大容量伝送を実現する.光ネットワークは将来のインフラとして必要不可欠な技術であるが,物理層に起因する減衰や雑音等の信号劣化の問題が顕在化する.従来の電気的なネットワークにおいても信号劣化は問題となるが,光ネットワークにおいては,エンドツーエンドで光信号のままデータ伝送を行うため,ネットワーク内部における雑音除去等による信号劣化の防止は非常に困難である.このような信号劣化は,光ネットワークの伝送性能を大きく低下させてしまう.この問題を解決する根本的な方法として,伝送装置やファイバ等の改良により上記の信号劣化の要因を取り除くことが考えられるが,技術的な限界が存在する.そこで,上位レイヤから,つまりネットワーク側からの解決を図る必要性が非常に高まっている. 本研究では,このような背景のもと,物理層の影響を考慮した動的な光ネットワーク制御を行うための複数の課題を提起し,それらの解決策を提案することで,高品質光ネットワークの構築を行っている. 平成24年度では,信号劣化要因として,非線形光学効果を考えた.中でも四光波混合に着目し,四光波混合の影響を抑制するような光ネットワーク制御手法を提案した.また,複数ファイバを用いた光ネットワークの伝送性能改善方法や,消費電力を考慮した制御手法についても提案を行った.本研究では計算機シミュレーション実験により,提案した手法の有効性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定の通り,信号劣化を考慮した光ネットワーク制御手法の提案を行い,その研究成果を発表しており,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては,光ネットワークの信号劣化要因として,非線形光学効果の一つである四光波混合に着目した.平成25年度は,自己位相変調や相互位相変調といった他の非線形光学効果の影響を考慮した光ネットワーク制御手法の提案を行う.具体的には,課題を(a)経路及び波長選択問題,(b)ネットワーク保護及び修復,の二つの小課題に分け,これらを段階的に解決する. まず,課題(a)において,非線形光学効果の影響を考慮した経路及び波長選択手法を考案する.光ネットワークの性能は伝送に使用する経路及び波長に強く依存する.よって,それらの戦略的な選択が必要であるが,上位レイヤのみの情報(例えば各リンクの負荷状況やトポロジー)による経路,波長選択を行うと,伝送損失が大きい経路や波長を選択してしまう可能性がある.本研究では,発生が予想される非線形光学効果の大きさに応じて動的に経路及び波長を選択する手法を提案する.また,計算機シミュレーション実験によりその有効性を示す. 課題(b)では,ネットワーク保護及び修復問題について扱う.光ネットワークでは大量のデータが伝送されるため,故障等が発生した場合,多くのユーザに影響が出る.そこで,代替経路の利用等の光ネットワークの保護及び修復手法が提案されている.本研究では,非線形光学効果が光ネットワークの保護及び修復に与える影響を考察し,新たな保護手法を提案する.また,計算機シミュレーション実験を用いて,その有効性を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は計算機シミュレーションにより評価を行うため,主に使用する設備は計算機であり,計算機の購入を計画している.また,研究動向調査のため,光通信技術に関する研究資料が必要となる. さらに,国内外の学会における研究成果の発表や,関連する研究者との打ち合わせのための旅費として使用することを計画している.また,研究成果を論文誌に投稿するため,その掲載費や別刷り代に使用する予定である.
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