研究課題/領域番号 |
23700086
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
塚本 和也 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (20452823)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ダイナミックスペクトルアクセス(DSA) / トランスポートプロトコル / クロスレイヤ / ネットワーク協調型 |
研究概要 |
本研究では,マルチホップ車車間(V2V)通信をコグニティブ無線ネットワークで提供する環境に着目し,頻発する利用可能なデータレート,及びパケットエラー率の変化を検知するために「エンドノードとNW 内部ノード間の柔軟な連携」と「上位/下位レイヤ間連携(クロスレイヤ制御)」の双方を用いる新しいトランスポートプロトコルの提案を目指す. 本年度はまず、有線/無線さらにはアドホック無線ネットワーク環境を対象とする既存のトランスポートプロトコルについて詳細に調査し,有線環境のSACK,無線環境のTCP-Westwoodに加え、コグニティブ無線アドホックネットワーク環境を対象とするTP-CRAHNに着目した.その上で,本研究で対象とするV2V 通信にDSA 技術を適用した際の通信性能についてシミュレーション実験を通じて評価した.その結果,データレート及びパケットエラー率の変化が各手法の通信性能に与える影響について明らかにした。 加えてマルチホップ通信において頻発する上記の影響を軽減する手法として,TCP Proxyを用いた「コネクション分割手法」に着目し,GNU Radio/USRP2を用いた実機環境にTCP Proxyを導入した上で,実環境での通信性能を評価した.その結果,想定するDSA+V2V環境におけるコネクション分割の有効性,及び解決すべき課題について明らかにできた. 最後に,ネットワーク/クロスレイヤ協調型手法の基礎検討として,比較的実装が容易なフィードバック(内部ノードから送信ノードへの通知)手法を検討し,先行して研究を進めていたPLC環境を対象とする新トランスポートプロトコルの提案を行った.提案手法では, NW内部の状態に応じて適切な送信量を送信側に明示的に通知するexplicit 手法を用いており,その有効性をシミュレーション実験によって明らかにできた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた項目全てにおいて,当初の予定通り研究が進捗している.具体的には,まず既存トランスポートプロトコルの想定環境(コグニティブ無線技術をV2V通信に適用する)における通信性能についてシミュレーション実験を通じて評価できた.加えて,「エンドノードとNW 内部ノード間の柔軟な連携」と「上位/下位レイヤ間連携(クロスレイヤ制御)」の双方を実現可能な手法としてexplicit手法によるフィードバック制御に着目した上で,シミュレーション実験を通じてその有効性を評価できた.加えて,「利用可能なデータレート,及びパケットエラー率」の頻繁な変化の影響を最小限に抑える手法としてTCP Proxyを用いたコネクション分割手法に着目し,その有効性をGNU Radio/USRPを用いた実機環境において評価できた.以上に示す通り,当初の予定通り研究が進捗していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24 年度はエンド/NW 内部ノード間連携,及びクロスレイヤ制御を実現する手法として,平成23年度に提案したフィードバック手法に加えて,NW 内部ノード自身がデータ転送をサポートするコネクション分割手法の概念に近い「アクティブ協調」手法も視野に入れる.その上でこれら各手法の有効性についてシミュレーション実験により詳細に評価する事で,各手法が適用可能なケースについて検討する.加えて,有効性が確認できた手法をGNU Radio/USRP を用いた実機に実装し,実環境で実験を行う事で,手法の実用性について検証する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
昨年度予定していた研究会への参加が困難な状況となったため,少額ではあるものの研究費に余剰が発生した.そこで次年度においては,23 年度に行った研究成果をより積極的に国内研究会,及び国際会議において発表するために必要な旅費及び参加費を計上している.加えて,提案手法の実環境での有効性について実証実験を通じて検証するために,GNU Radio/USRP を1 セット追加購入するための費用を計上している.また,海外への研究成果の効率的なアピールを目的として,質の高い国際会議/論文誌への採録のために英文添削費を計上している.最後に,研究をスムーズに進捗させるためにシミュレーション,及び実機を用いた実証実験のための補助要員として研究支援者を2 名(各1 名)雇用するための予算を計上している.
|