研究課題/領域番号 |
23700089
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
池田 誠 福岡工業大学, 情報工学部, 助教 (10592941)
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キーワード | ネットワークプロトコル / モバイルネットワーク技術 / ユビキタスコンピューティング / 相互接続性 / ネットワークアーキテクチャ / ネットワークシミュレーション / メッシュネットワーク / アドホックネットワーク |
研究概要 |
無線通信装置の複数の無線通信のサポートが可能になり、移動体への高速な転送を実現するため無線メッシュネットワークを用いたサービス提供が事業化されている。メッシュノードの設計がよりモジュール性が高くなりそれぞれ異なる周波数で通信する複数の無線カードをサポートできるようになったためである。本研究では、コンピュータ(ノード)のみで自律分散的に構成するネットワークとそのゲートウェイとしてメッシュノードを複数接続する無線メッシュネットワークを構築し、屋外・屋内におけるネットワークの冗長性と環境特性の関係を明確にする。この結果をもとに無線メッシュネットワークを利用するユーザが効率的にネットワークを利用しサービス品質を満足する高信頼性確率論的経路制御手法を提案することを本研究の目的としている。 当該年度(第2年度)では、初年度に引き続いて構築中であった無線メッシュネットワークのためのテストベッドシステムとシミュレーションシステムをもとに、ヒューリスティック手法を用いたネットワーク構築のためのリソース使用量の低減手法、アルゴリズム、通信プロトコルについて研究を実施した。 当該年度の成果として、大規模なネットワークにおける提案アルゴリズムの信頼性を検証することが可能になり、車両間通信やアドホックネットワーク等の応用分野に活用できる成果を得ることができた。また、学術論文(査読付)に5編、国際会議(査読付)に23編の論文が採録、国内の研究会・連合大会等で5編の発表と招待講演(メッシュネットワークに関する研究動向について)を1回と、活発に研究活動が行えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に基づいて、研究が進展している。当該年度は、初年度に引き続いて構築中であった無線メッシュネットワーク(WMNs)のためのテストベッドシステムとシミュレーションシステムをスケーラビリティのある性能評価を行えるように両システムの改良を行った。初年度のシミュレーションシステムでは、ネットワークシミュレータのNetwork Simulator 3を用いてシステムを構築していたが、当該年度で購入したQualNetを用いてシミュレーションシステムを再構築した。また、初年度では遺伝的アルゴリズムを用いてメッシュルータの最適な配置を求めることで、ネットワーク構築のためのリソース使用量の低減手法を提案し評価してきたが、新たに、ヒューリスティック手法の焼きなまし法と山登り法を採用することで、小~中規模環境における通信の信頼性を向上させることができた。 研究成果として多数の国際会議に論文が採録され、電子情報通信学会のMoMuC研究会では「無線メッシュネットワークの研究動向と将来」と題し招待講演を行った。また、2012年12月にインドネシアで開催された「The 10-th International Conference on Advances in Mobile Computing and Multimedia (MoMM 2012)」では発表した論文がBest Paper賞を受賞し、国際的にも本研究が認められた。当該年度は以下の項目を中心に研究を実施した。 (1)ヒューリスティック手法を用いたネットワーク構築のためのリソース使用量の低減(負荷分散) (2)無線メッシュネットワークのためのコンポーネント・制御アルゴリズムの評価 (3)シミュレーションシステムの改良と通信プロトコルの評価 (4)アプリケーションの利便性評価
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究結果から小~中規模なネットワークと大規模ネットワークにおいてはアルゴリズムを使い分けたほうが良い結果が出ることが分かった。今後は、経路探索アルゴリズムにおいて、端末と経路の2つの状態変化に起因する信頼性を考慮し、パケット到着率の高い経路を選択する手法を考える。この状態変化を確率と見なし、経路の信頼性が変化するという考え方をシミュレーションすることで、本手法の信頼性を評価する。本手法では経路情報の検定とパケット到着率からベイズ推定より最適経路の推定を行う。検定においては、ノンパラメトリック法のクラスカル・ウォリス検定、フリードマン検定を用いる。端末の移動が頻発し隣接端末情報の変化が多い環境では、端末管理データベースの各端末情報が肥大するため、ノンパラメトリック法が有効である。また、経路の導出には遺伝的アルゴリズム、焼きなまし法、山登り法を用いる。前述のノンパラメトリック法及びベイズ推定により算出した情報を遺伝子とし、コーディングする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の推進方策で述べたアルゴリズムと通信プロトコルの設計と評価を行う。また、メッシュネットワークのみでなく本手法が応用可能な分野(車車間・路車間ネットワーク、センサネットワーク)についても、調査する。さらに、本研究課題の纏めとして査読付き学術論文に投稿を予定している。 次年度の開発・シミュレーション用に研究費を利用する計画である。また、研究の成果を発表するために論文登録費と渡航費に研究費を利用する。すでに、7月に台湾と日本で開催される各国際会議で論文が採録決定しており論文発表を行う予定である。
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