研究課題/領域番号 |
23700093
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
新井 イスマイル 明石工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (60512572)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 計算機システム / 情報システム / スマートセンサ情報システム / ユビキタスコンピューティング |
研究概要 |
本研究はスマートフォン等の普及型携帯端末に搭載されるカメラやセンサ(Wi-Fi、地磁気、加速度)を活用し、AR(Augmented Reality)によるナビゲーションアプリケーション(以下、ARナビ)のための高精度な屋内測位・姿勢推定を実現する。現状のARナビは、センサの単独出力値が屋内で低精度なため実映像上のコンテンツ表示位置が大幅にずれる問題がある。我々はこれに対し、全天球パノラマ写真上の正確な位置にコンテンツを重畳表示するシステムを開発している。本提案によってその場のパノラマ写真(=ユーザ位置)と写真内座標(=姿勢)が特定できれば高精度なARナビが実現可能となる。本提案はインフラ構築コストが低く、普及型携帯端末を利用可能な実現可能性の高い手法である。研究期間内にライブラリ等の成果物を公開し多くの開発者に利用してもらうことで、現在のARナビの高精度化が可能で、またその他の高精度な測位・姿勢推定を要するアプリケーション(避難経路誘導や迷子案内、施設管理、ライフログ、エクササイズ、ゲーム等)にも応用可能である。平成23年度は、センサフュージョン、テンプレートマッチングによる屋内測位・姿勢推定システムを並行開発した。その結果、センサフュージョンによる大まかな測位・姿勢推定の基礎技術開発が概ね完了した。具体的には、センサログのヒストグラムや平均値、中央値を確認することによって大まかな指針を得ることができた。具体的には加速度データによる鉛直方向の推定はそのままセンサデータの値を信用してよいことが分かった。水平方向については地磁気センサの出力値が屋内で不安定なことが分かり、バッファを考慮すると180度程度の信頼度しかないことが分かった。その結果は平成24年5月の情報処理学会論文誌に掲載予定の論文に記載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は測位・姿勢推定システムの下地となる、センサフュージョンによる大まかな測位・姿勢推定の基礎技術開発およびテンプレートマッチングによる詳細な測位・姿勢推定の技術開発を行った。センサフュージョンによる大まかな測位・姿勢推定については、研究実績の概要でも示した通り、センサログの信頼度について概ね概算が完了し、候補画像選出システムもこの知見を元に構築できた。テンプレートマッチングによる詳細な測位・姿勢推定の技術開発については当初の予定通りに開発が進まず、歩行者のクリーニング機能が実現できなかった。スマートフォンをユーザが固定できないため手ぶれ補正に相当するソフトウェア処理が事前に必要だが、手ぶれ以外にスマートフォン内蔵カメラの出力に残像があるため、理論通りの処理が適応できなかった。それ以外のひずみ耐性のあるテンプレートマッチングについても上記の開発が遅れたため未着手となった。姿勢推定は従来の開発物があるため、上記未着手部分をキャッチアップできればすぐに実現可能である。また、校内・ショッピングモールの全天球パノラマ撮影を機会があればやることとしていたが、結局平成23年度内に要求がなく実現しなかった。そのため撮影に必要な機材を購入する必要がなく、多くの予算を平成24年度に繰り越す結果となった。ほか、国際会議での発表を1件計画していたが、上記開発遅れの影響で実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には昨年度の遅れを取り戻した上で、申請時の計画通りに研究開発を進める。遅れが生じたテンプレートマッチングによる詳細な測位・姿勢推定の技術開発中に気がついた点として、現在までの達成度に記載した通り、歩行者が写っていない領域を撮影してテンプレートマッチングをしても現在地の推定が可能な可能性がでてきたため、方針を変更して研究開発・検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度の最後に示したように、全天球パノラマ撮影と国際会議発表が遅れたため160万円程度の繰り越しが発生した。撮影(予算120万円程度)は平成24年度の7月に大阪梅田周辺地下街を対象に行う予定である。国際会議(予算40万円程度)についても年度内の挽回の発表を行う。今年度入金分については申請時の予定通り執行する予定である。
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