本年度は,以下の研究を行った. (1) 既存の二次元マーカとwebカメラを用いた位置推定手法を,本研究のように大きな会場を歩き回るユーザが多数のマーカによって位置を推定するために利用するには,マーカとして利用できるパターンの少なさ,解像度およびフレームレートの低さ,検出・認識の精度の低さなどの問題があった.そこで,GPGPUを用いた,高解像度・高フレームレート・高精度な二次元マーカを用いた位置推定手法を提案した.この成果は,第21回 マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSWS2013),および,情報処理学会論文誌にて発表した. (2) 上記(1)の二次元マーカ位置推定手法を改良し,マーカをアニメーションさせることでアドホックデータな通信を行う手法について研究を行った.これは,本研究ではユーザ間のデータ交換において膨大な通信が発生するため,限りある無線通信帯域を使わずともデータ交換を行える手段を確立することが目的である.この手法によって,無線通信帯域や特殊な機材を用いずとも,ディスプレイとwebカメラだけで,ユーザ間のオブジェクトのモデリングデータなどのデータの交換を容易に行うことができる.この研究成果は,マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2013)シンポジウムにて発表し,優秀論文賞を受賞した.また,第21回 マルチメディア通信と分散処理ワークショップ(DPSWS2013)にてデモ発表を行い,優秀デモンストレーション賞を受賞した. (3) 上記(1)(2)のシステムおよび,これまでに研究を行った情報の差別化の機構を採用した実・仮想混合インタラクションを実現するシステムの実装を行った.特に,データ共有やユーザの嗜好に合わせた情報の差別化を行うためのネットワーク構造やQoE機構の実現を目指しているが,完成には至っていない.
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