本年度は,仮想化インタフェースを利用した負荷分散方式について,トラフィックの変動状況に応じて適切なタイミングで仮想化インタフェースを切り替える方式について検討を行った.具体的には,各アクセスポイント(AP)の負荷の状況を,各端末が発生させるトラフィック量と,各端末の伝送レートに従い定量化し,一定量の負荷の変化が生じた際にトポロジの更新を行うためのトリガを発するアルゴリズムを考案した.また,トポロジの更新を行うトリガを発するアルゴリズムと,更新後のトポロジを計算するためのAP選択アルゴリズムとの関係を明確に分離し,既存研究で提案されている様々なAP選択アルゴリズムを状況に応じて組み替えられるような構造となるよう,各モジュール間のアーキテクチャを設計した.提案方式により,既存方式で用いられている,一定周期に基づくトポロジの更新方式における適切な周期の設定が困難である,という問題に対し,トリガ駆動(言い換えると,イベントドリブン)によるトポロジの更新を可能とし,一定量のトラフィックの変動に対し即座に適応可能なAP間の動的負荷分散を実現した. 本年度に考案した手法について,ネットワークシミュレータ(ns-3)を用いて性能評価を行った.比較対象として,RSSI(Received Signal Strength Indication)が最大のAPへ接続するレガシ方式に比べ,集約スループットを最大で約59%向上でき,また,端末間の公平性の指標であるJain's Fairness Indexについては,最大で約28%向上できることを確認した.
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