研究概要 |
「係数個数符号予測に起因する画質劣化低減方式」については, フレーム境界MB 内ブロックのTotalCoeff を最適な値で固定化する ことで予測不一致を回避する方式を提案し,大幅な変換速度向上を達成した.ここでは,従来方式と比較して,入力ビットストリーム の量子化パラメータによる係数分布にも依存するが,概ね約40倍から100倍以上の速度向上達成した.これは,画像伝送サーバにおい ては,収容ユーザ数の同値程度の向上を実現することとなることから,サーバ費用の大幅な削減を実現できる.従って,本提案方式の 有効性は極めて高いものを考えられる.一方,当初より問題視されていたパラメータ固定による画質劣化についても大きな問題ではな いものの,それを低減するための量子化制御方式を提案した.これは,符号結合時の大幅な速度低下を回避しながら,画質劣化を低減 することが可能であることから有効である. 一方,「画質劣化を低減可能な符号長調整処理方式」については,符号長調整(バイトアラインメント)のためのビット調整アルゴリ ズムとして,MB ラインを2パス符号化を用いたビット調整方式を提案した.これは,上記の変換速度の向上の主要因の一つとなって いることから,この方式の有効性は前記の通りである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は,高速化された符号変換方式を実システムへ転換する際に課題となる「低遅延メディアファイルアクセス方式のアルゴリズム」 を確立し,MB ライン符号変換方式とあわせてシステム実装することで統合評価を行う予定であった. しかしながら,内閣府総合科学技術会議での兼務業務(週あたり3日フルタイム勤務.2011年度開始.)により,研究に割り当てる時間が大幅に削減され,実験および実装の作業が予定通りにすすまず,また補助員およびその稼働時間を確保することが難しく,執行が遅延した.また,前記兼務により,海外出張する時間を確保することが難しく出張費の執行もできなかった.以上から,実装および実験と成果発表を来年度に行うため,未使用額を来年度の経費に充てることとしたい.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,高速化された符号変換方式を実システムへ転換する際に課題となる「低遅延メディアファイルアクセス方式のアルゴリズム」 を確立し,MB ライン符号変換方式とあわせてシステム実装することで統合評価を行う.具体的には以下の通りである. ○視聴領域移動特性を考慮したファイルアクセス予測方式:変換処理とファイルアクセスが同時に発生することを回避するため,視聴 領域が移動するか否かの検知とファイルアクセス(オープンやシーク)を,実際の変換処理とは異なるプロセス(スレッド)で行うこ とで,ファイルアクセス速度の変換処理速度への影響を低減する.検知については,クライアント端末からの視聴領域移動情報を随時 監視し,新たにアクセスする符号を利用した実際の変換処理が行われる1周期前に,移動の判定を行う.これにより,1周期分,別プ ロセスでファイルアクセスを行うことが可能となる. ○ ファイルアクセス特性を考慮した分散ファイル配置方式:さらに,ファイルアクセスの集中を回避する方式を提案する.具体的に は,同時に結合される領域符号を含むメディアファイル同士を異なるストレージに配置することで,アクセス速度を分散化することが 可能となる.映像のファイルアクセス特性,例えば,視聴者からのアクセス特性も含めて,最適なファイル配置アルゴリズムを確立す ることで,高速変換を実現する方式を研究する. ○ システム実装による統合評価実験:上記の提案アルゴリズムについてシステム実装し統合的な速度評価を行う.先に述べたように ,本成果は,実サービスとして展開開始するため,実際のフィールド実験として実システムを用いた検証,評価が可能となる.
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次年度の研究費の使用計画 |
低遅延メディアファイルアクセス方式のアルゴリズムの検証に関わる装置の整備と,実験環境整備のための作業補助用謝金に使用する.また,研究成果の発表については,IEEEのConsumer Electronics Society国際会議ICCE 2013(米国ラスベガス)に発表を予定し,その参加,渡航費用に充当する計画である.
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