研究課題/領域番号 |
23700109
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
林 貴宏 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60342490)
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キーワード | ベクタ画像 / 画像検索 / 形状照合 |
研究概要 |
平成24年度は、ベクタ画像のマッチング法の開発およびマッチングにおける負荷分散、マッチングコスト削減へ向けた高速化を行った。具体的には以下を実施した。 (1)ベクタ画像のマッチングに必要な前処理であるラスタベクタ変換処理の高度化として、物体の一部が他の物体に遮蔽された図形(欠損図形)に対し、元の形状が線対称性、点対称性であるものを判定する手法を開発した。これにより、欠損図形の元形状を復元し、ベクタ画像検索の精度向上が期待できる。 (2)ラスタベクタ変換処理の前処理として、ラスタ画像からのオブジェクト領域抽出法の検討を行った。特に、ゲシュタルト知覚論において定性的に示されている人間の知覚特性である「接近」「隣接」「類同」「よい連続」などの定性的な法則の中で、「よい連続」に関する定量化を行い、このモデルを取り入れた物体領域抽出手法を提案した。 (3)ベクタ画像のマッチングコスト削減のために、間接形状マッチングと呼ばれる高速なマッチング手法を新たに開発した。これまでベクタ画像のマッチングは計算コストが大きく、負荷分散および高速化が不可欠であったが、開発手法により従来法による検索速度に比べ10万倍以上の高速化に成功した。さらに、間接形状マッチングは並列化が可能であり、負荷分散が可能となるため、複数計算機による負荷分散処理により、さらなる高速化が達成可能と期待できる。負荷分散処理の実装は24年度中に完成しておらず、引き続き25年度に実施していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究実施計画通り順調に進展している。特に、ベクタ画像検索の高速化として開発した間接形状マッチングは、複数の実験により、有効性が判明されてきており、WEB応用へ向けて核になる技術となると期待できる。これまでベクタ画像のマッチングは計算コストが大きく、負荷分散および高速化が不可欠であったが、開発手法により従来法による検索速度に比べ10万倍以上の高速化に成功した。具体的には約10億枚のベクタ画像を持つデータベースに対する検索では、従来法とほぼ同等の精度を維持しつつ、約1秒での検索が可能となった。実用レベルの速度性能、検索精度が得られている。これにより、高度な並列計算環境を利用しなくとも、一般的な計算機だけで、十分に実用レベルの検索サービスを実現できると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度において負荷分散処理の実装を行う予定であったが、実装は完了していない。そのため、平成25年度は負荷分散処理の実装を行う。また、これまでの研究成果発表を予定している。また、これまで開発した間接形状マッチングの考え方は汎用性があり、ベクタ画像だけでなく風景写真画像等の一般的なラスタ画像に対しても有効性が期待できる。そこで、間接形状マッチングをベクタ画像以外の画像の検索へと適用し、その有効性を確認し、研究のさらなる発展へとつなげていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度において負荷分散処理の実装を行う予定であったが、実装は完了していないため、これを平成25年度に実施する。これに伴い、24年度に導入予定であった負荷分散処理用計算機の導入は平成25年度に行う。24年度までの研究成果はすでに国際会議、ジャーナル論文等に投稿済みであり、今後、これらの採択が決まれば、海外旅費、論文別刷代等が発生するため、これらに研究費を使用する計画である。
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