研究課題/領域番号 |
23700111
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
西崎 博光 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (40362082)
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キーワード | 音声中の検索語検出 / 音声ドキュメント処理 / 音声内容検索 / 音声認識 / 音声インタフェース |
研究概要 |
本研究の目的は大規模音声データから任意の語彙が発話されている区間を特定する音声中の任意語彙検出(STD)技術の高度化を図ること,その技術を大規模音声ドキュメント内容検索と音声認識に応用しこれらの精度を改善させることである.平成23年度は,STD技術の高度化に重点を置いて研究を行った.その成果を受け,平成24年度では,さらなるSTD技術の高度化とSTD技術の音声認識への応用に取り組んだ. 平成24年度では,STD技術の実利用を狙うため,高い検出率と湧き出し誤り削減の両方を実現する方法を考案した.通常,高い検出率と湧き出し誤りの増加には高い相関がある.STD技術を実利用するためには,高い検出率が必要であり,この場合,湧き出し誤りの増加は避けて通れない.そこで,検索用インデックスの複雑さ尺度を用いて湧き出し誤りを抑制する手法を考案した.これにより,高い検出率が得られたときでも湧き出し誤りを抑制することに成功した(検出率65~80%で湧き出し誤りを最大10%抑制).この技術を,「電子ノート作成支援システム」に搭載した.このシステムでは大学の講義音声・動画をタブレット端末に保存することができ,音声・動画を検索する機能として,STD技術を組み込んだ.被験者実験の結果,本STD技術が実利用できることを示せた. さらに,STD技術を音声認識性能の改善に応用する方法を考案した.音声のアーカイブを音声認識で行うことを考えたとき,必ずしもリアルタイムで音声認識を行う必要はない.そこで認識対象の音声に対してSTDを行い,認識対象音声にどのような単語が含まれているのかを推定しておく.推定された単語のみを使って音声認識辞書を作成し,この辞書を用いて再度音声認識することで認識率を改善する.実験の結果,約1.5%の認識率の改善を得ることができた. 以上が平成24年度の研究実績である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標は,STD技術のさらなる高度化を図ることと,STD技術の音声認識への応用が目標であった.本報告書の「研究実績の概要」でも説明したように,新しい尺度を考案し,平成23年度に開発したSTD技術を更に高めることができた.また,実環境での利用を想定し,電子ノート作成支援システムを開発した.このシステムにSTD技術を組み込むことで,実用化への足がかりを得た.また,STD技術を音声認識性能の改善に応用する方法を提案し,提案手法によって一定の効果を得ることができた. 以上のことから,計画通りにおおむね順調に研究が進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により,高い検索性能を持つSTD技術を開発することができた.しかし,検索精度は高いが,検索時間が遅く,実用的に本技術を利用するにはまだ少し問題が残る.そこで,本年度は,開発したSTDの検索精度を損なわない処理の高速化の研究を行う.具体的には,分散処理あるいはインデキシングの改良によって,これを実現する予定である.同時に,STD技術を高めるために,新しいSTD技術を模索する.具体的には,機械学習手法を用いて「音声認識システムの誤り方」のモデルを学習し,このモデルをこれまでに開発してきたSTD技術と融合する.これによって,高速化とさらなる高度化を実現することができる.また,国立情報学研究所が主催する競争型国際会議「NTCIR-10(第10回NTCIRカンファレンス成果報告会)」に参加し,STD技術を評価したい.NTCIR-10ではSTDを対象とした競争型タスクが提案されている.NTCIR-10に参加した全チームは,共通の評価基盤を利用していることから,本技術が世界の技術の中でどこに位置づけられているのかを知ることができる. また,最終年度では,STD技術の応用を模索する.例えば,音声ドキュメント内容検索へ応用することで,検索の高精度化を目指す.また,音声インタフェースを備えたシステムにSTD技術を組み込み,使い勝手の良いインタフェースの実現を目指すことで,本技術の実用化に弾みをつけたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は約37万円の繰越が発生した.これは,予定していた国際会議(アメリカで開催)へ投稿した論文が力及ばず不採択になり,同国際会議に参加をしなかったためである.渡航費および会議参加費を有効利用するため,平成25年度に繰り越すこととした. 平成25年度は,STDの分散処理化を計画しているため,高速計算機を2台購入予定にしている(平成24年度分の繰越しを利用し,より高速な計算機を購入する).また,平成23・24年度の研究成果を国際会議で報告するための旅費・研究成果をまとめた論文の論文掲載料を計上する.
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