• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実施状況報告書

無線LANとセンサを併用した屋内位置推定手法の構築

研究課題

研究課題/領域番号 23700114
研究機関名古屋大学

研究代表者

梶 克彦  名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40466412)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード無線LAN環境特異点 / LOS・NLOS / 無線LAN距離関数 / ゲート検出 / デッドレコニング
研究概要

屋内にはドアやエレベータのような空間を区切る構造物が多く存在する.このような構造物は無線LAN電波を遮蔽したり減衰させる.よって,このような構造物の前後では電波環境が大きく異なる場合が多い.そこで,無線LAN 環境が大きく変化するような地点(以降,無線LAN 環境特異点と呼ぶ) にはドアのような構造物が存在する可能性が高いと考え,無線LAN 環境特異点を自動検出する手法を提案した.本手法では,一定間隔で無線LAN の電波環境を観測する携帯端末をユーザが保持し,屋内を歩行する場面を想定する.ユーザの歩行速度から導き出される移動距離と,無線LAN の距離関数から導かれる距離を比較し,それらが大きく異なる地点を無線LAN 環境特異点と推定する.本研究の実施期間中に,提案手法と関連する研究成果が発表された[1].歩行速度の情報から各基地局の電波が見通しの良い状態(LOS)/見通しの悪い状態(NLOS)のどちらであるかを検出し,NLOSと判定された電波は位置推定の重要度を低下させるというものであ提案した無線LAN環境特異点手法は,今後デッドレコニングの累積誤差修正に利用する予る.本手法は,歩行速度と無線LAN距離関数を用いる点は共通しているが,各基地局の電波について,LOSとNLOSの状態変化の瞬間をとらえ,そのような変化する地点に意味を見出すという点が異なる.定である.1. Li, M., Tasaka, K., and Yoshihara, K., An Integrated Location Method using Reference Landmarks for Dead Reckoning System, Proc. the Workshop on Internet of Things and Service Platforms (IoTSP '11), 2011.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究で当初提案したのは,加速度センサ等に基づくデッドレコニングの累積誤差を,無線LANのFingerprint(事前観測情報)に基づく絶対位置推定によって修正するという手法であった.しかし,類似研究が既に存在しており[1],独自性と優位性が明らかとなるよう提案手法の再検討を行った.従来手法の実用上の最も大きな障壁は,無線LAN環境を事前観測しなければならない点である.そこで,Fingerprintを必要としない屋内測位手法を検討することとした.まず,無線LANの観測情報のみから移動軌跡を推定する手法[2]に着目し,推定軌跡を加速度センサ等で修正するという,従来手法とはまったく逆のアプローチを検討した.しかし,実際に実装して検証したところ,手法[2]は建物構造に大きな制約が存在し,利用が困難であることが判明した.次に,累積誤差修正は絶対位置推定精度の高い地点でのみ行えばよい点に着目し,大きく無線LANの環境が変化する地点(無線LAN環境特異点)の通過検出手法を検討した.予備実験の結果,累積誤差修正への応用が可能であると判断されたため,以降は無線LAN環境特異点に基づいて研究を推進した.以上の通り,23年度の前半が研究方針の模索に費やされたため,全体の進捗としてやや遅れが生じている.1. Seitz, J., et. al.,A Hidden Markov Model for Pedestrian Navigation, Proc. Workshop on Positioning, Navigation and Communication, 2010.2. Ferris, B., et. al.,WiFi-SLAM Using Gaussian Process Latent Variable Models, Proc. IJCAI , pp.2480-2485, 2007.

今後の研究の推進方策

前年度の研究成果である無線LAN環境特異点に基づくゲート検出をベースとして研究を推進する.まず,加速度センサの情報を利用し,無線LAN環境特異点の検出精度を向上させる.現在特異点検出に使用している,ユーザの歩行速度から推定される移動距離を固定値として設定しているため,ユーザの移動速度の動的な変化に対応できていない.そこで,加速度センサの情報より歩数と歩幅を推定し,実際の移動距離に反映させる.通常ドア等の通過時には,ドア開閉動作のために単位時間当たりの移動距離は低下する.実際の移動距離情報を導入すれば,少ない移動距離で大きな電波強度変化を観測した場合と,速足の歩行時における大きな電波強度変化を区別することが可能となる.次に,同一の無線LAN環境特異点の通過を検出する手法を検討する.特異点検出の要因となった電波強度変化のパターンを比較して,閾値以上類似する特異点同士を同一の特異点とみなすことを考察中である.同一特異点の検出が可能になれば,デッドレコニングの累積誤差修正に利用可能となる.さらに,加速度と地磁気センサを用いたオーソドックスなデッドレコニング手法を実装し,同一特異点通過検出に基づいて累積誤差修正を試みる.本手法の適用条件は,複数回同じ地点を通過することである.しかし日常生活において,同じドアを通過するようなシチュエーションは頻繁に発生するため,適用条件は現実的であると考える.

次年度の研究費の使用計画

国内学会参加費:30,000,国際学会参加費:70,000,旅費:200,000,論文別刷:50,000,評価実験謝金:50,000,研究用デバイス・実験機材:100,000,合計:500,000研究・実験に用いる機材はほぼ前年度に購入済みであるため,本年度は主に研究成果発表にかかる費用の支払いに研究費を使用する.本年度中に,国内研究会1回,国際会議1回の対外発表を予定している.また,研究調査のための国内研究会への出張を3回程度予定している.本年度後期において本研究成果を論文誌に投稿予定であり,論文別刷り台を計上している.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] indoor.Locky: UGCを利用した無線LAN 屋内位置情報基盤2011

    • 著者名/発表者名
      梶克彦,河口信夫
    • 雑誌名

      情報処理学会論文誌

      巻: Vol.52, No.12 ページ: 3263-3273

    • 査読あり
  • [学会発表] 端末移動に伴う無線LANの電波環境変化に着目した構造物検出手法2012

    • 著者名/発表者名
      梶克彦,河口信夫
    • 学会等名
      第74回情報処理学会全国大会
    • 発表場所
      名古屋工業大学
    • 年月日
      2012.3.6
  • [学会発表] GMMに基づく無線LAN位置推定精度と 電波観測情報の関連性評価2011

    • 著者名/発表者名
      梶克彦,河口信夫
    • 学会等名
      マルチメディア,分散・協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2011)
    • 発表場所
      天橋立宮津ロイヤルホテル
    • 年月日
      2011.7.6

URL: 

公開日: 2013-07-10  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi