人的コストの高い無線LAN環境の事前観測を必要としない,デッドレコニングの累積誤差修正手法を提案した.累積誤差修正は絶対位置推定精度の高い地点でのみ行えばよい.また,日常生活において同一の地点を複数回通過するという点に着目する.高い絶対位置推定精度を実現しうる地点として,ドアなどのゲートに着目した. ドアは物理的に通路や部屋を区切る構造物であり,無線LAN の電波はドアによって減衰または遮断される.よって,ドアの前後において電波環境が大きく異なる.逆に,無線LAN環境が大きく変化した場合,ドア等のゲートを通過したとみなす. このような地点を無線LAN 環境特異点と定義し,無線LAN 距離関数から導かれる移動距離と加速度データから推定される移動距離を用いて特異点検出を行う手法を提案した. 無線LANの電波強度変化から,最少移動距離を求める.また加速度センサからは最大移動距離を求める.通常では,最少移動距離が最大移動距離を上回ることはないが,無線LAN環境特異点では電波強度の大きな変化のために,推定される最少移動距離が大きくなり,加速度センサから推定する最大移動距離を超える.このような地点を特異点とみなし,をゲート通過区間であるとみなす. 実環境においてゲート通過検出手法の評価実験を実施し,半数以上のドア通過を検出可能であることを確認した.また,同一ドアの通過推定に関しては,特定のドアに限り90%を超える高い精度での推定が可能であることを確認した.
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