研究課題/領域番号 |
23700132
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
奥 健太 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (70551555)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 情報推薦システム / 限定価値 / 地理情報検索 |
研究概要 |
アイテムの限定価値を考慮した推薦システムの実現に向けた研究を行っている.本研究では,人は,いつでもどこでも手に入るアイテムよりも,いまだけ,ここだけしか手に入らないアイテムに魅力を感じるという点に着目し,アイテムの限定価値の表現方式について検討している.特に,(a)空間的限定価値,(b)時間的限定価値に着目して研究に取り組んでいる. 平成23年度は,効果的な推薦システムを設計するために,ユーザがどのようなアイテムに価値を見出すかという観点に着目し,新しい評価指標に基づく推薦システムの検討を行った.具体的には,ユーザの潜在的嗜好を推測する協調フィルタリング手法の提案[KES2011],セレンディピティを重視した推薦システムの提案[DiveRS2011][DEIM2012]を行った. また,(a)空間的限定価値および(b)時間的限定価値の算出方式について検討を行った.(a)については,まず,実データとして,グルメ情報サイトであるぐるなびから位置情報付き飲食店データを収集した.収集した位置情報付き飲食店データを解析することで,対象地域ならではの語句を抽出する手法を定義した.本手法の有用性を評価するために,日本国内の主要な地域を対象とした実験を行った.その結果,特に観光地においては,本手法が有効にはたらくことが確認できた.(b)については,マイクロブログサービスであるTwitterにおいて発信される位置情報付きツイートを収集した.ツイートの位置情報および時間情報に基づき解析することで,観光地の時間的特徴付けを行う手法を検討した. 限定価値を考慮した情報推薦システムの有用性を示すことにより,従来の嗜好に忠実な情報推薦とは異なる,新しい観点に基づく推薦システムの実現可能性を示すことができる.情報推薦分野において本研究を遂行することの学術的意義は大きい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,新しい評価指標に基づく推薦システムの検討を含め,(a)空間的限定価値および(b)時間的限定価値の算出方式について検討を行った. まず,新しい評価指標に基づく推薦システムに関する研究については,おおむね順調に進展しているといえる.具体的には,新しい評価指標としてセレンディピティに着目し,そのセレンディピティを重視した推薦システムの提案を行った.この研究に関しては国内研究会[DEIM2012]および国際会議[DiveRS2012]にて成果発表するにまで至った. また,(a)空間的限定価値の算出方式に関する研究についても,おおむね順調に進展しているといえる.本研究では,位置情報付きのコンテンツとして,グルメ情報サイトであるぐるなびから,62,571件の飲食店データの収集を行った.この位置情報付き飲食店データを解析することで,対象とする地域ならではの名物やランドマークなどを抽出する手法を提案した.実際の日本国内の地域を対象に実験を行った結果,三重県松阪市や伊勢市,奈良公園などといった観光地を対象としたとき,特に本手法が有効にはたらくことを確認できた.本研究に関しては,現在,国内論文誌に投稿している段階である. (b)時間的限定価値の算出方式に関する研究については,やや遅れている状況であるといえる.位置情報および時間情報付きのコンテンツとして,マイクロブログサービスであるTwitter上で発信されたツイートの収集を継続的に行ってきたが,十分なデータを蓄積するのに時間を要したためである.ただし,現在は,2010年8月から2012年3月までの期間中ツイートの収集を行った結果,総数1,500万件という膨大なデータを蓄積している.平成24年度は,このデータを基に解析を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度において確立した基本的手法に基づき,今後は推薦システムの実装およびユーザ評価を主に行っていく. 新しい評価指標に基づく推薦システムに関する研究については,セレンディピティを向上させるための基本的アイディアを確立したため,そのアイディアに基づく推薦システムを実装する.さらには,複数のアイディアも検討し,併せて実装を行う.実際に,推薦システムを用いて被験者実験を行い,ユーザ評価を行っていく.最終的には,国内研究会および国際会議において成果発表を行う. (a)空間的限定価値の算出方式に関する研究についても,基本的アイディアは確立できたので,実際にそのアイディアに基づく推薦システムを実装し,公開していく.実際に被験者に推薦システムを利用してもらい,実用の観点からシステムの評価を行う.本研究に関しては,論文誌への掲載を目標としている. (b)時間的限定価値の算出方式に関する研究については,位置情報および時間情報付きコンテンツから,時間限定価値を算出する方式について検討を行う.その後,実際に推薦システムとしての実装を予定している.本研究に関しては,国内研究会に置いて成果発表を行うことを目標としている.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,推薦システムのユーザ評価および研究成果発表が主となる.そのため,実験補助として被験者への謝金等,国内研究会および国際会議,さらには学会誌への投稿に予算を割り当てている. 研究成果発表の目標としては,9月に開催されるヒューマンインタフェースシンポジウム2012(九州大学),Webとデータベースに関するフォーラム(場所未定),データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム2013(場所未定)などの国内研究会での研究発表,ACM Recommender Systems 2012などの国際会議での研究発表を予定している.そのための国内および外国旅費,英文校閲費などを予算に割り当てている.さらには,学術論文誌への投稿も予定しているため,学会誌への投稿料も割り当てている.
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