H25年度は,ヒト同士が自然な環境でコミュニケーションを行っている際の前頭前野の脳活動を超小型NIRSで計測し,インタラクションの有無が脳活動間の関係性に与える影響を探る実験を前年度に続けて行った.その結果,インタラクション条件では非インタラクション条件と比較して,脳活動間の同調的関係性強度が有意に高まることが明らかにされた.解析手法の工夫により,信号の同調性が外的なアーティファクトに依るものではなく確かに脳活動に由来するものであることも確立できた.この結果は,脳活動からインタラクションの質や共感といったインタラクションで生じる創発的な特性にアクセスできる可能性を示唆している. また,同じ対象に注意を向け続ける中での集中力の持続の変動に相関する神経基盤を探るためのfMRI実験を行った.その結果,集中が指定された対象から逸れている時にはデフォルトモードネットワーク(DMN) の活動が高まっているが,DMNの内側部と外側部,前部と後部の活動状態は違う意味合いを持つこと,また実行制御機能に関わるとされる背外側前頭前皮質なども集中が逸れている時に活動が高まっていることなどが観察された.これらの結果は,脳活動から集中の持続や逸脱をリアルタイムにモニタし振舞いに反映させることで「飽きのこない」ブレイン・エージェント・インタラクションを実現するための重要な知見である. 本課題で得られた研究結果について,国際会議,国内学会にて成果発表を行った.また結果の論文化を進め,一部は国際学術誌に投稿済み,残りも投稿準備中である.
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