研究課題/領域番号 |
23700151
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
武岡 成人 静岡理工科大学, 理工学部, 講師 (30514468)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 超多チャンネル信号処理 / パラメトリックスピーカ / 立体音響 / 高速1bit信号処理 |
研究概要 |
本研究は超指向性スピーカとして利用されているパラメトリックスピーカにアレイ制御を導入し,壁面反射を介すことにより音源位置を任意に制御できる3次元音場再生システムの構築を目的としている。本年度は精細に波面を制御可能なパラメトリックスピーカの作成と基礎測定を行った。また,本装置を用いる事により複雑な波面の超音波ビームを生成できることからパラメトリックスピーカの分野で潜在的な課題となっていた受聴点における超音波領域のエネルギーを独立に制御できる可能性を示した。1.高精細な波面の生成を目的としたパラメトリックスピーカの作成超音波素子の配列を正三角形状とし,水平方向を個別駆動する64ch制御の指向性可変なパラメトリックスピーカを作成した。制御範囲が水平方向に限られるものの各チャンネルには個別の2.8MHzの1bit信号をアサインでき,また22MHzサンプリングでの遅延を任意に付加することが可能である。各列の間隔は水平方向で約5mmとほぼ空間の標本化定理を満たしており指向性制御時に問題となるグレーティングローブが原理的に発生しない。本装置による各方向への超音波ビーム出力時の指向性を測定し,上記要件を満たしつつ15度内で30dB以上の超指向性(復調音)を有していることを確認した。2.受聴点における超音波帯域の独立制御パラメトリックスピーカはその超音波出力の健康への影響がしばしば議論されていた。そこで超音波と可聴音の伝搬特性の違いに着目し,対象者が受聴する点では超音波のエネルギーが抑圧されるような再生波面の生成法を提案した。具体的には提案装置を用いて焦点制御を行うことにより,受聴点に至る過程は概ね平面波でありながら超音波エネルギーを受聴点外に集中させる実験を行った。その結果受聴点において目的信号である可聴音にはほぼ影響を与える事なく超音波エネルギーを10dB以上抑圧することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は基礎段階として精細な波面制御が可能なパラメトリックスピーカを作成し,特性を確認した。研究遂行上での位置づけとしては,次年度以降検討を進めるシステム全体におけるキーデバイスを確立したと考えている。一方試作したシステムの検証を進めていく上で新たな知見として超音波領域の独立制御手法の基礎的な検討を加えることができた。これは当初の予定になかった一つの進展であり,提案していたシステムに予定外の成果が含まれる可能性がある。初年度に反射壁の設計を行う従来の計画と順番を前後したものの一定の成果を得たこと,新しいテーマを加えたことを考慮し概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果として複雑かつ多方向の波面を生成するパラメトリックスピーカシステムを構築した。そこで平成24年度は扇状の反射壁の試作・検討を進める。提案方式は平面波の重ね合わせで音場が構成される点において点音源を想定している通常の立体再生方式と異なっており,新たな手法の確立が重要な検討課題となる。また,通常のスピーカとは再生原理が異なることからどのような材料で反射壁を構築するべきか,形状の工夫なども重要な課題となる。ステップとしては前年に試作した装置をもとに,まず反射壁を用いて受聴点への波面を集中させるシステムを水平面のみの制御で構築する。その後音場再現としての理論を確立し25年度春頃を目安にシステムを構築する。25年度はそれらを3次元に拡張した理論の構築および音場再生システムの構築に取り組み,研究成果の発表を重点的に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
反射壁の制作に大部分を費やす。まず超音波が鏡面反射するものとして簡潔な構造の反射壁を加工の用意な木材で作成する。その後現装置での測定実験を行いそれらから得られた知見をもとに試作を重ねる。 また再生音場の評価も重要な項目となることから,それら評価に必要となるマイクロホン等録音系の費用,成果報告としての論文投稿費,学会発表旅費にあてる予定である。
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