本研究は,デジタルミュージアム実現のため,重要文化財を非接触で計測し,視覚情報だけでなく,触力覚などの多感覚情報を用いて多面的にモデル化し,実物大・等身大スケールでリアルタイムかつ高精細に文化財を提示するだけでなく,直接触ったり,手にとって重さや形,触感を感じながら,様々な方向からインタラクティブに観賞するといった,直接インタラクション可能な高臨場感・高没入感を伴う展示インタフェースの実現し,また,文化財の形状,色,質感などを効率よく計測・モデル化し,多感覚で提示するためのフレームワークを確立することを目的としている. これまでの成果として,初年度(平成23年)の祇園祭終了後,船鉾保存会の収納庫の改修工事のため,収納庫に保管する文化財を長期間外部に移動する計画が予定されていたため,この機を利用し,レーザレンジスキャナによる三次元形状計測及びマルチバンドカメラによる織物文化財の計測を行った.また,デジタルアーカイブ化された文化財モデルを実物大・等身大スケールで展示するためのシステムの設計を行った.最終年度(平成24年)は,初年度に計測した織物文化財を画像解析に基づいてテクスチャベースで統合・三次元モデル化し,粒子ベースでリアルタイムに三次元復元およびハンドリング可能な実物大展示システムの実現を行った.また,手の姿勢や指の曲がり具合をリアルタイムにシミュレーション可能な手指シミュレータを構築し,多指で実物体に対してなぞる,つかむ等の操作時に感じる重さ,硬さ,摩擦等の触感を計測・同時に提示可能なシステムを構築した.非接触による文化財の形状計測・モデル化・多感覚提示についてはテクスチャベースによる効率的なフレームワークを確立することができた.
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