研究課題/領域番号 |
23700155
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
栗原 一貴 独立行政法人産業技術総合研究所, 情報技術研究部門, 研究員 (10462855)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 視線計測 / 電子黒板 / コンテンツ理解 |
研究概要 |
本研究の目的は,電子黒板システムにおいて「システム操作に伴う身体動作」が聴衆に与える影響を,視線情報の取得などに基づき定量評価することで,操作者のユーザビリティと聴衆のコンテンツ理解度を同時に最適化することである.23年度の計画は,一般的な電子黒板システムの使用時に聴衆のコンテンツ理解度に影響を与える要因を定量的に調べ,運用TIPSとしてまとめて公開することであった.実際に研究を推進した結果,動画コンテンツ提示時の聴衆の視線移動とコンテンツ理解度に関する興味深い知見を偶然発見することができ,その分析を中心に深めていった.最終的に得られた知見は動画コンテンツの高速鑑賞支援システムとして結実し,開発システムは一般公開された.また得られた知見および運用TIPSをまとめ,国内の当該分野の査読付きのトップカンファレンスWISS'11に論文を投稿し,採録され,登壇発表を行った.本論文は採録論文全20件から1件だけ選出されるベストペーパー賞を受賞し,また本発表は全登壇発表から1件だけ聴衆の投票で選出される発表賞を受賞した.いずれも希少価値のあるものである.本成果は本研究が目指す「操作者のユーザビリティと聴衆のコンテンツ理解度を同時に最適化する電子黒板システム」の実現に向けて,まずは操作者の介在しない状態での聴衆の視線移動の性質やコンテンツ理解度との関係についての基礎的検討として位置づけられる.具体的に得られた知見・運用TIPSとしては,音声を伴う動画コンテンツの提示時には,冗長な言語情報であっても字幕情報を同時に提示することがコンテンツ理解に良い影響をもたらす可能性があること,またその際に字幕提示位置がコンテンツ理解と密接な関係を持つ可能性があることなどが挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が目指す「操作者のユーザビリティと聴衆のコンテンツ理解度を同時に最適化する電子黒板システム」の実現に向けて,まずは23年度の目標である,「一般的な電子黒板システムの使用時に聴衆のコンテンツ理解度に影響を与える要因を定量的に調べ,運用TIPSとしてまとめて公開する」について,動画コンテンツ提示時の聴衆のコンテンツ理解度に関して,視線計測器および理解度調査により定量的に検討し,運用TIPSを含む論文発表の形で公開を行うことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
24年度の計画は,「Dual-Purpose Gesture Designに基づくsPieMenuの改良等を通じて,聴衆の視線の局所化を達成するインタフェースデザイン手法を洗練させる.最終的に開発したソフトウェアを公開する.」である.必ずしもsPieMenuの改良にとらわれず聴衆の視線の局所化を達成するインタフェースデザインを模索していく.また大学との共同研究を模索しており,知財の問題から場合によってはソフトウェア公開に至らない可能性があるが,その際は論文公開および学会発表等の形で成果を社会に還元していきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り実験,および学会発表のための旅費,またユーザスタディの謝金等に使用予定である.
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