現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分散メモリ型並列計算機を用いてモンテカルロ木探索を高速化するために解決するべき課題として挙げたものは a, 均等な負荷分散手法の実現, b, グラフ合流による問題の解決 c, 確率的探索であるための弱点の補完の3点である。まず、a, b, を解決した並列化手法を提案し、実際に並列化版のモンテカルロ木探索を実装し、仮想的なゲーム木を対象とした実験を行って性能を測定した。数百倍以上の速度向上を達成する手法を明らかにすることを目標としたが、既に 1,200 CPU コアを用いて 600~750倍程度の速度向上、4,800 CPUコアを用いた実験では 1,500倍以上の速度向上が得られている。実験は複数の分散並列計算機上で行った。主に高速なネットワーク (Infiniband) で接続されたクラスタ (スーパーコンピュータ) を用いたが、安価な環境での性能を測定するために広く普及している ethernet を用いたクラスタ上でも性能を測定した。また、c, を解決するために統計的な指標に簡単な工夫を加えることを提案し、複数のゲームにおいて勝率の向上につながることを示した。モンテカルロ木探索はゲーム木の形状によって性能が低下する場合があるが、この手法によりそのような場合にある程度対処することが可能である。従来は問題の性質を利用して個別に対処していたが、本手法は汎用的に利用可能な物である。ここまでの成果により、従来は困難であった分散並列計算にによるモンテカルロ木探索の高速化手法が可能であることを示した。これは平成23年度の計画としては十分に達成されたと言える。特に速度向上の数値は計画当初の目標を上回る性能を示している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の実験結果から得た知見を元にさらなる速度向上を得る試みを進める。また、今まで応用されてきた問題以外の問題に適用し、有用性を示す。理論面の弱点については、さらなる手法を検討すると共に、複雑な数式を用いた場合に、現実的な速度で探索を行う手法を研究する。速度向上について。昨年度は主に 1,200 CPUコア程度を最大とする計算機環境を用いて実験を行っていた。その結果、期待を上回る速度向上を得た。そこでさらに 4,800 CPUコア程度を用いた予備実験を行い結果を解析したところ、予想していなかったボトルネックがあることを発見した。今後は新たに発見されたボトルネックを解消する方法を明らかにし、 1万CPUコア以上で 5,000 倍以上の速度向上を得るために必要な手法について研究を行う。弱点の補完について。提案した確率的探索の弱点を補う手法はまだ改善の余地があると期待される。しかし探索速度の制約から、計算が簡単で効果のある手法に限定して研究を行っていた。今後は二つの方向で研究を進める。まず、理論的には良いが複雑なために計算時間がかかる手法を、圧縮したテーブルなどを保持することによって高速化する。また、特定のグラフ形状に絞って有効な手法を複数提案し、探索中に動的に手法を変更することによって性能向上を得る。応用について。大規模なグラフ探索が必要となる問題、従来のグラフ探索アルゴリズムが苦手とする問題などにこの手法を適用し、有効性を示す。
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