研究課題/領域番号 |
23700160
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
寺井 あすか 東京工業大学, グローバルエッジ研究院, テニュア・トラック助教 (70422540)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 比喩理解 / 特徴創発 / 計算モデル / fMRI / 国際情報交流(アメリカ、インディアナ) |
研究概要 |
本研究では「AのようなB」という形式で表される比喩において喩える語,喩えられる語どちらに対しても関連の弱い特徴が,比喩の表す特徴として創発される現象(特徴創発)の認知メカニズムを明らかにすることを目的としている。 比喩理解の計算モデル(内海2000, Terai, Nakagawa 2008他)では、特徴創発を特徴間の影響関係によって説明している。しかし,これらのモデルでは,創発のメカニズムをシミュレーションにより検討しているだけであり,心理実験を用いた認知メカニズムの検討はなされていない。そこで、比喩理解における特徴間の相互作用と特徴創発との関連について、比喩理解時間の観点から検討を行った。比喩理解過程において創発特徴が特徴間の相互作用により顕現化するのであれば、創発特徴は非創発特徴と比較して、比喩の解釈として認識されるためにより長い時間が必要となると考えられる。そこで、比喩理解時間を変化させた実験を実施した。 まず、先行研究の実験結果に基づき、創発特徴と,非創発特徴を抽出した.次に、参加者に対し比喩、ついで特徴を提示し,提示された特徴が直前に提示された比喩の表す解釈であるか否かを回答させる実験を行った.実験においては,比喩の提示時間が短い短時間条件と十分に比喩の解釈を行うことができる長時間条件を設け、これらの条件間での回答傾向の違いを検討した。その結果、非創発特徴と比較して、創発特徴が比喩の特徴として想起されるためにはより長い時間を要することがわかった。対照的に、非創発特徴は短時間条件と比較し、長時間条件において比喩の特徴とみなされる割合が減少した。従って、比喩理解過程における特徴間の相互作用の存在を示唆する結果を得ることができた。 また、平成24年度以降の研究として計画していた比喩理解における脳内メカニズムに関する検討を、fMRIを用いる実験として開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成23年度において以下2点に関する研究を実施することを予定していた:1)心理実験を実施し、比喩理解時間と特徴創発の関連を検討することで比喩理解過程における特徴間の相互作用の有無について明らかにする。2)すでに構築された比喩理解の計算モデル(Terai, Nakagawa 2008)と、実験で得られた結果との関連を検討する。計画1)については、実験を実施し比喩理解過程における相互作用の存在を示唆する結果を得ることができたが、2)については今後本格的な実施を予定しているfMRIを用いた実験結果を含めた形で、モデルと実験結果の関連について検討する予定である。 計画2)に代わり、平成24年度以降の研究として計画していた比喩理解における特徴創発の脳内メカニズムに関する検討として、比喩理解における特徴創発に関わる神経基盤の解明を目的としたfMRIを用いた実験を開始した。所属機関においてfMRIの利用が可能となったため、当初の予定ではNIRSを用いた実験のみを行う予定であったが、NIRSと併せてfMRIを用いた実験での検討を行うこととした。実験では、参加者に比喩と創発特徴または非創発特徴を提示し、特徴が比喩の解釈としてみなせるか否かを、ボタンを押すことで回答してもらった。非創発特徴に対して、創発特徴の処理において活性化する脳の部位を明らかにすることで、特徴創発に関わる神経基盤を明らかにすることを目的としている。平成23年度でのfMRIを用いた実験は、予備的なものであったため、平成24年度から本格的に実験を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果として、比喩理解過程における特徴間の相互作用に関する検討を、比喩理解時間の観点から行ったが、直接的に相互作用に関しての検討は行っていない。そこで、プライミング効果を用いた心理実験を行うことで、創発特徴処理における特徴間の相互作用の影響に関する検討を行いたいと考えている。実験では、参加者にプライミングとして非創発特徴を提示する。その後、比喩、創発特徴を提示し、創発特徴が比喩の解釈としてみなせるか否かを回答してもらう。プライミングとして非創発特徴を提示した場合と、プライミングを提示しない場合での創発特徴処理の違いを検討することで、非創発特徴提示が創発特徴処理に及ぼす影響について明らかにする。また、平成24年度以降の研究として計画している、比喩理解における特徴創発の脳内メカニズムに関する検討を本格的に実施する。当初の計画では、NIRSとアイマークレコーダを併用した実験の実施を計画していた。しかし、平成24年度より、所属機関においてfMRIとアイマークレコーダを併用した実験が可能となる見込みである。また、fMRIはNIRSと比較し、より優れた空間的分解能を持ち、脳機能部位の詳細な解剖学的位置づけが可能であるため、より詳細に脳活動の測定を行うことが可能である。そこで、fMRIを用いて実験を行い、比喩理解における特徴創発に関わる神経基盤に関する検討を行いたいと考えている。そのうえで、平成23年度の研究として計画していた、比喩理解の計算モデル(Terai, Nakagawa 2008)と実験で得られた結果との関連を検討する予定である。また、3月25日から31日に実験実施、情報収集のため京都大学に出張を行ったため、大学経理からの支出が3月31日までに完了せず、残額が生じた。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属機関である東京工業大学のfMRIを用いた実験の実施を計画している。このfMRIの利用料金として1時間4万円が必要である。今年度の実験では、実験参加者数15名、1回あたりの実験に1.5時間かかると考え、15人 x 1.5時間 x 4万円 = 90万円の利用料金がかかることを想定している。また、実験参加者1名に対し謝金として8000円を支払うため、15名x 8000円 = 12万円の謝金、fMRIで得られたデータを分析するためのコンピュータ1台30万円が必要となる.また、研究成果発表・報告をCogSci2012(北海道、札幌コンベンションセンター)、日本認知科学会大会(宮城、仙台国際センター)、ICANN2012(スイス,Lausanne大学)にて行う予定である。また、京都大学への情報収集を予定している。そのため、国内旅費5万円 x 3回 = 15万円、国外旅費25万円が必要となる。また、それぞれの学会の大会参加費として5万円、Native Check代として一回2万円として2万円 x 3回 = 6万円、その外参考書籍代金、トナー代などの費用として7万円を予定している。
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