研究課題/領域番号 |
23700160
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
寺井 あすか 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (70422540)
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キーワード | 比喩理解 / 特徴創発 / 計算モデル / fMRI / 国際情報交換 / アメリカ・インディアナ大学 |
研究概要 |
本研究では、「AのようなB」という形式で表される比喩において喩える語,喩えられる語どちらに対しても関連の弱い特徴が,比喩の表 す特徴として創発される現象(特徴創発)の認知メカニズムを明らかにすることを目的としている。 特徴創発を特徴間の影響関係によって説明している計算モデル(Terai, Nakagawa 2012)の妥当性を検証すべく、心理実験を用いた実験を実施した。実験では、創発特徴が比喩の解釈としてみなされる過程において、プライミングとして別の特徴を提示した場合の影響を検討した。その結果、喩える語かつ喩えられる語のどちらにも由来する共有特徴をプライミングとして提示することで、創発特徴の比喩の解釈としての認識は促進されるが、喩える語または喩えられる語のどちらかに由来する特徴の提示は、認識を阻害することが分かった。このことから、「喩える語」「喩えられる語」に共有する特徴が発見された後、その特徴(共有特徴)との関連により創発特徴が比喩の解釈として見なされるという過程が示唆された。 また、昨年度実施した、比喩理解における創発特徴の処理過程における脳内メカニズムを解明することを目的とした、fMRI実験により得られたデータの詳細な分析を実施した。その結果、非創発特徴処理と比較し、創発特徴処理において右脳におけるより強い賦活が見られる事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成23年度において比喩理解における特徴創発の処理過程に関する脳内メカニズムを明らかにするためのNIRSをもちいた 実験のみを行う予定であった。しかし、NIRSによる検討・fMRIを用いた検討の両者を同じ課題を用いて実施したところ、fMRI実験においてより詳細な結果を得る事が可能であることが明らかとなった。そのため、今年度より本格的にfMRIを用いた実験を行う予定であったが、所属機関(東京工業大学)のfMRIが設置されている建物の補修工事のため、使用ができない状態が続いたため(平成25年4月現在も工事中のため使用不可)、予定していた実験を実施することができなかった。平成25年度には、工事が終了しfMRIが使用可能となる予定であるため、実験を再開し、研究を進めていきたいと考えている。 上記の理由により、研究に若干の遅れが発生したが、今年度は実施予定であった実験計画を再度見直しを行い、計画の改良を行った。そのため平成25年度からは、改良した実験計画でのfMRIを用いた実験の実施を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に実施予定であった実験が、fMRI設置建物の工事の影響により実施が不可能であった。そのため、平成24年度実施予定であったfMRIを用いた実験計画の改良、改良した実験実施のための予備調査を実施することで、新たな実験の準備を行った。そこで、平成25年度はfMRIを用いて、改良した実験の実施を行う。また、平成25年度内に、所属機関のfMRi設置建物の工事終了が予定されており、その後fMRIの使用が可能になる予定である。しかし、万一それ以上の遅延が生じた場合に供え、他大学のfMRIを用いた実験実施も予定している。また、平成24年度の未使用額は平成25年度の研究のために使用する。 さらに、平成25年度は本研究課題の最終年度であることから、fMRI実験から得られた知見に基づく比喩理解における創発の認知メカニズムの解明を行うとともに、これまでに構築した計算モデルの修正を行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の未使用額1,074,192円は全て、平成25年度の研究計画のために使用する。fMRIを用いた実験の実施を計画している。実験計画を改良し、fMRI内にて発話レスポンスにて被験者に回答を求めるという形式での実験実施を計画している。そのため、MRI対応マイクロフォンの購入に100万円程度の予算が必要となる。また、実験参加者1名に対し謝金として8000円を支払うため、15名x 8000円 = 9万円の謝金、別途行動実験のための事件参加者1名に対する謝金1500円x60名=9万円、データを分析するための並列計算機(TSUBAME)の利用料6000円x12月=7.2万円が必要となる. また、研究成果発表・報告を日本認知科学会大会(東京都・玉川大学)にて行う予定である。そのため、国内旅費1万円 x 1回 = 1万円、学会の大会参加費として1万円が必要となる。また、論文投稿のためのNative Check代として一回2万円とし て2万円 x 3回 = 6万円、その外参考書籍代金、トナー代などの費用を予定している。
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