研究課題/領域番号 |
23700163
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
小倉 加奈代 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (10432139)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | コミュニケーション / CMC / メディアインタラクション / ユーザスタディ / チャット |
研究概要 |
本研究の目的は,「人間の内側」に目を向け,コミュニケーションにおける人間の内的な制約の緩和・解決と,人間の思考特性の活用により,既成概念を超越可能とする新しいコミュニケーションメディアを考案・実装することである. 本年度は以下2つの課題を実施した.(1)複数の時間流を取り入れ擬似的に「忘却」のメカニズムを組み込んだ議論記憶の精錬化を可能とするコミュニケーションメディアのユーザスタディの実施と有効性の検証,(2)文化的・社会的要因および人間関係に影響を受けず多様な意見を引き出すことが可能なコミュニケーションメディアのコンセプトの立案 上記の2つの課題の実施により以下の結果を得た.課題(1):ユーザは,複数の時間流に対し,自発的に発言内容に応じて使い分けを行うこと,その結果として,例えば議事進行に影響を及ぼすような重要発言は,固定した時間流に発言するというように,会話の進行と同時並行的に発言履歴の精錬化が行われることを確認した.課題(2):社会的・文化的要因および人間関係が影響しやすいインフォーマルコミュニケーションに焦点をあて,そのうちの食事場面に着目し,「大皿の取り分け」行動に対して,日本特有の文化である「お酌」の「お酒を注ぎ合う=奉仕し合う」行動を取り入れることで,言葉の壁やプライド,地位,親密度といった社会的・文化要因および人間関係を排除し,コミュニケーション機会を増やし,積極的に会話を行うための枠組みを考案した.考案した枠組みの有効性の検証実験を行い,通常では,会話の輪に入る事ができなかった参加者のコミュニケーション機会が増加したこと,参加者間で偏りなく均等なコミュニケーション機会をもつことが可能になったことを確認し,考案した枠組みが社会的・文化的要因および人間関係の制約を解決するために有効に機能することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では,本年度は,最終的に開発予定である以下3つのコミュニケーションメディア(1)複数の時間流による忘却のメカニズムを応用して議論記録を自然に整理する機能をもつコミュニケーションメディア(2)複数話題を同時並行が可能であり,誰もが随時発言可能なコミュニケーションメディア(3)社会的・文化的要因および人間関係に影響を受けず多様な意見を引き出すことが可能なコミュニケーションメディアのうちの,(1)のユーザスタディと(2)のプロトタイプシステムの改良作業を行う予定であったが,結果的に,(1)について当初の予定どおり実施し,(2)のシステム改良作業を行わず,その代わりに次年度以降に実施予定であった,(3)のコンセプト立案作業を実施した. 当初の計画と照らし合わせると,実施できなかった項目はあるが,次年度以降に実施予定であった(3)の作業を完了することができたことから,全体の進捗状況としては,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,当初実施予定であった,最終的に開発予定である,3つのコミュニケーションメディアのうちの(2)複数話題の同時並行が可能であり,誰もが随時発言可能なコミュニケーションメディアのプロトタイプシステムの改良作業を行わず,代わりに,次年度以降に実施予定であった,(3)社会的・文化的要因および人間関係に影響を受けないコミュニケーションメディアのコンセプト立案作業を実施した.そのため,今後の実施計画を変更する必要がある.具体的には,今年度および来年度に実施予定であるコミュニケーションメディア(3)に関する作業の一部を(2)に関する作業に振替を行う.それ以外の作業は当初の予定通りに実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,当初実施予定であった,(2)複数話題の同時並行が可能なコミュニケーションメディアのシステム改良に関わる作業を行わず,(3)社会的・文化的要因および人間関係に影響をうけないコミュニケーションメディアに関する基礎的検討を行ったために,成果発表に関わる旅費以外に大きな出費の必要がなく,次年度への繰り越しが発生している. 次年度は,本年度の当初予定であった上述(2)のシステム改良作業および,(3)のプロトタイプシステムの開発作業を行うため,サーバや電子回路部品,実験で使用するためのPC類や記憶媒体を購入予定であり,本年度の繰り越し分も含めた物品費用の出費が予想される.また,システム改良やプロトタイプシステムの完成後にユーザビリティおよび効果検証実験を行う必要があるため,謝金についても本年度分の繰越金を含めた出費が予想される.さらに,本年度実施した(3)のコンセプト立案に関わる研究成果発表として,国際会議への論文投稿をすでに行っており,さらに国内会議等への発表予定もすでにあるため,旅費についても本年度よりも大幅な出費が予想される.また,査読付き論文誌への投稿も行う予定であるため,採録された場合の印刷費用も捻出する必要がある.
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