最終年度は,前年度までに作業が完了している話者交替規則にとらわれず複数話題の同時進行を可能とするコミュニケーションシステムと,人間の忘却メカニズムを取り入れたコミュニケーションシステムを統合し,ユーザの潜在的感情情報を可視化する機能と過去の発言順序を考慮した発言順序制御機能を追加したシステムを構築し,構築システムを用いた有効性の評価実験を行うことを計画した. 最終年度の成果として,参加ユーザの発話タイミングを気にせずに発話するために, 1発話を1音声ファイルとして記録することができ,人間の忘却メカニズムと同様に,記憶にとどめたい発話を記録するための固定発話履歴,記憶にとどめる必要のない発話を記録するための可動式発話履歴(2つの異なる時間設定の履歴を用意)の複数の時間流を持つ発話履歴を持ち,記録した音声ファイル,もしくは入力文字を発話履歴上に投稿するシステムを構築した.また,構築システムが正常に機能することと,複数の話題を用意したコミュニケーション場面で,複数話題を同時進行(維持)できるか,発話の種類(重要な発話,冗談のような軽い発話)に応じて,発話を投稿する際の履歴の使い分けが起こるかを実験により検証し,テキストによる発話が好まれる場合がほとんどであり,音声とテキストとの混在,自由な使い分けが現状のシステムでは困難であり,システムの改良がさらに必要であることを確認した. 本研究期間全体の成果として,当初予定していた(1)話者交替規則に縛られず複数話題の同時進行を可能とする.(2)複数の時間流による忘却メカニズムを組み込んだ議論の精錬を可能とする.(3)文化・社会的要因による人間関係に影響を受けずに多様な発話を可能とする.という3つそれぞれを可能とする個別のシステムは実現できたが,3つを統合したシステムの実現には至らなかった.
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