研究課題/領域番号 |
23700168
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平山 高嗣 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (10423021)
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キーワード | マルチモーダルインタフェース / 注視行動 / 模倣 / 興味 / 気づき |
研究概要 |
自己の潜在的状態への気づきは,いつ生まれるのであろうか?本研究では,ユーザの注視行動をシステムが模倣することでユーザに自己の潜在的な興味への気づきを促進する注視模倣インタラクションを設計し,その効果を評価する.その過程で,①気づきを促進する模倣インタラクションの構成要素を明らかにし,②模倣に対するユーザの注視反応行動,注視協調行動を数理モデル化,③生体指標を含めたマルチモーダルデータに基づく気づきの兆候の抽出を目指し,大規模な被験者実験を通じて注視模倣による興味への気づき理論を深化させる.本研究で得られる成果は,興味と注視行動の関係を明らかにするための有用な知見になると考えられる. 注視模倣インタラクションにおける注視行動は,システムによる模倣とユーザの内的状態だけではなく,注視対象を構成する画像や文章といった要素オブジェクトの属性,複数オブジェクト間の空間的構造,意味的関係性などにも影響を受けて表出される.そこで,平成24年度は,視覚的コンテンツのレイアウト構造と注視行動の時空間特徴との関係および,それらと内的状態との関係を分析し,ユーザが商品カタログから商品を選ぶ状況において,情報を獲得する状態では各商品を表現するオブジェクト領域内での頻繁な注視位置の切り替えが表れ,複数オブジェクトから1つを選択決定する状態ではオブジェクト領域間での頻繁な注視位置の切り替えが表れることを定量的に抽出し,それらの注視行動をモデル化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に行った視覚的コンテンツのレイアウト構造と注視行動の時空間特徴および内的状態との関係の分析は当初計画されていなかったが,模倣に対するユーザの注視行動を数理モデル化するために考慮しなければならない分析要素であり,重要な知見を獲得することに至った.その知見に基づくと,ユーザは情報獲得状態や選択決定状態といった内的状態に応じて注視行動を変化させるため,システムによる模倣方略のパラメータ制御もユーザの注視行動状態を考慮することが有効であると考えられる. 年度途中での職位の変化と,日本学術振興会「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」のもとでの3ヶ月間の海外滞在が影響し,本研究へのエフォートが計画当初の想定範囲外で下がり,計画通りの進展を達成することができなかった.そのため,計画よりやや遅れているが,注視模倣インタラクション以外の状況での注視行動に関わる研究を並列に推進させ,平成23年度から継続的に行ってきた「人間の視覚的注意の計算モデル」についてのサーベイ活動が論文執筆へと展開し,英論文誌に採録されるなど,今後の研究推進を加速し,注視模倣による興味への気づき理論の議論を深化させるための重要な成果を挙げている.
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今後の研究の推進方策 |
システムによる注視模倣を,ユーザが自己に対する模倣として認知するか,模倣ではなく他者の注視行動として認知するかによって,ユーザの注視行動に差異が現れる可能性がある.平成25年度はまず,模倣方略のパラメータを制御する被験者実験を行い,いくつかの模倣パターンに対する注視行動を比較分析する.先行実験において,同期同調した注視模倣に対して実験参加者の多くは不快さや違和感を感じていたため,模倣としての自然さの主観評価も並行して行い,上述の比較分析結果に基づいて注視行動と興味の関係も明確化させられる最適なパラメータを導出する. 平成25年度に行う実験では,視線計測とともに生体指標計測も行う計画であり,模倣方略と注視行動に依存した生体指標の差異を分析し,ユーザが自己の興味に気づく兆候の抽出の可能性を議論する.そして,平成24年度に行った視覚的コンテンツのレイアウト構造と注視行動の時空間特徴および内的状態との関係の抽出に適用した分析手法を応用し,注視模倣インタラクションの数理モデル化を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は生体指標計測設備の準備を行ったが被験者実験を行うまでに至らなかった.それに関わる経費分が平成25年度に繰り越される形になる.平成25年度は主に,模倣方略のパラメータを制御した上で生体指標計測を行う被験者実験および成果発表のために研究費を使用する計画である.
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