自己の潜在的状態への気づきは,いつ生まれるのであろうか?それを探るアプローチの一つとして,他者の興味,関心を理解するプロセスの一つである共同注視を自己と行う注視模倣インタラクションを提案している.本研究では,ユーザの注視行動をシステムが同期同調して模倣するGaze Mirroringを設計し,その効果を評価した.その過程で,①気づきを促進する模倣インタラクションの構成要素を明らかにし,②模倣に対するユーザの注視反応行動,注視協調行動を数理モデル化,③生体指標を含めたマルチモーダルデータに基づく気づきの兆候の抽出を目指した. まず,ユーザがディスプレイに提示された複数の視覚対象から好みのものを選択する状況において,興味を持つ対象への注視持続時間が有意に増加するというGaze Mirroring効果を確認した.そして,注視反応行動,注視協調行動を数理モデル化および気づきの兆候を抽出するための基盤として,視覚的注意の計算モデルを設計,視覚コンテンツのレイアウト構造とユーザの認知状態が及ぼす注視行動の変容を分析,多様な注視模倣を行いながらマルチモーダル生体情報を計測する環境を構築した.本研究で得られた成果は,興味と注視行動の関係を明らかにするための有用な知見である. 平成25年度は,注視模倣インタラクションの設計,興味と注視行動との関係および気づきの議論を行う上で,視覚的注意の重要性を再認識し,人間が視覚目標に注意を向ける際の視覚刺激への視線の誘目度を目標刺激の視覚特徴分布と視野内の局所的な視覚特徴分布との分散比に基づいて推定する計算モデルを提案し,従来モデルより良い性能を得た.
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