研究課題/領域番号 |
23700180
|
研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
木村 貴幸 日本工業大学, 工学部, 助教 (80579607)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 最適動作点追尾問題 / カオスダイナミクス / 組み合わせ最適化問題 |
研究概要 |
近年,太陽光発電などの自然エネルギーを用いた発電システムの導入が盛んである.これらの発電システムは,天候などの気象条件に左右され発電量が不安定となる.そこで本研究では,安定した電力量を供給するために,カオスニューラルネットワークを用いた最適動作点追尾のアルゴリズムの開発を研究課題として進めている.カオスニューラルネットワークから発生される豊富な非線形ダイナミクスを用いた提案アルゴリズムは,エネルギー最小化原理を用いずに解の探索を行うため,種々の最適化問題に対して効率的な解探索を行うことが可能となる.本研究課題の研究目的であるカオスニューラルネットワークを用いた効率的な最適アルゴリズムの提案のために,本年度は,最適動作点追尾問題と類似する動的な最適化問題の一つであるパケットルーティング問題に対して,カオスニューラルネットワークを用いた効率的なアルゴリズムを提案し,その性能を確認した.この研究成果に関して,国際会議において2編の研究発表を行なっている.さらに,上記の研究成果を学術論文としてまとめAmerican Journal of Operations Researchにて発表している.提案アルゴリズムを従来のものと比較することは,アルゴリズムの性能を明らかにするためにも非常に重要である.そこで上記の研究テーマと並行して,本年度では,現在一般的に用いられているPerturbation & ObservationアルゴリズムとIncremental Conductanceアルゴリズムの最適動作点追尾アルゴリズムをプログラミング言語によって作成し,計算機上での解析と評価を行った. さらに,太陽光パネルと各種計測器から構成される太陽光発電量計測システムを構築し,次年度の研究課題である提案システム実装のために,現在日照時間や気温の変化に対する発電量の計測を現在行なっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在一般的に用いられている遺伝的アルゴリズムなどのソフトコンピューティングを用いた最適アルゴリズムは,巡回セールスマン問題など,問題の構造が常に一定である静的な組み合わせ最適化問題においても局所解にトラップされてしまい,効率的な制御を行うことは非常に難しい.さらに,問題の構造が時々刻々と変化し,解を求めるために即応性が必要とされる動的な最適化問題では,従来の制御アルゴリズムを適用することが困難だと考えられる.これらの観点から,より実用的な動的な最適化問題に対して効率的な提案手法を構築するために,本年度では,動的な組み合わせ最適化問題であるパケットルーティング問題について,カオスニューラルネットワークを用いた最適制御手法を提案し,計算機上での評価を行った.計算機実験の結果から,入力の変動が激しく,問題の構造が非常に複雑な場合においても,提案した手法は効率良く個々のノードを制御し,最適な動作を行なっていることを確認した.本研究課題の最適動作点追尾問題とパケットルーティング問題は,解を求めるために即応性が必要とされる動的な最適化問題として非常に類似しており,現在まで得られている研究成果から,最適動作点追尾問題においても提案手法の性能が良くなることが予想される.これらの研究成果に関して本年度では,国内での研究発表として,電子情報通信学会にて研究成果の発表を行なっている.また, 国際会議において2編の研究発表を行なっている.さらに,上記の研究成果を学術論文としてまとめAmerican Journal of Operations Researchにて発表している.
|
今後の研究の推進方策 |
カオスニューラルネットワークを用いた最適動作点追尾アルゴリズム実現のために,平成23年度は,アルゴリズムの提案と評価,及び太陽光発電における発電量計測システムの構築を行なった.発電量計測システムは具体的に,トワダソーラー製ソーラパネル,電菱製DC-DCコンバータ,TEXIO製低電力電源,HIOKI製電力計から構成されており,これらの構築のため平成23年度の研究費が生じている.また,提案アルゴリズムの実現と評価のためには,高速演算が可能な計算機が必要となる.このため, Apple製iMacを購入するための研究費が生じている.現在,当研究室において発電量の計測が進んでおり,平成24年度では,種々の気象条件下において,引き続き電力の計測を行う.平成23年度は,パケットルーティング問題について提案手法の評価を行なっているが,現在までに得られた知見をもとに,平成24年度では提案手法の最適動作点追尾問題への適用を行い,手法の評価や,より効率の良いアルゴリズム実現のための解析を進める.さらに,当研究室が所有するスイッチング電源システムへの提案手法の組み込みを行う.このスイッチング電源システムは,パワー部フルブリッジ回路とPWMゲート制御用FPGA回路から構成されており,FPGA回路への提案手法の組み込みが容易である.これにより,計算機実験上のみではなく,提案手法を実装した場合における性能評価が可能となる.また,本研究計画の効率的な遂行ためにも,アルゴリズムの評価に関して,池口徹教授(埼玉大学)と松尾博文教授(長崎総合科学技術大学)と得られた結果に関して積極的な研究議論を行い,より効率的なアルゴリズムを提案する.また,提案アルゴリズムの実装に関しては,スイッチング発電システムの専門家である末富正之(アドバンスド・パワー・テクノロジー)の研究支援を得ることが決まっている.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究計画が効率良く遂行され,提案アルゴリズムを評価するための太陽光発電における発電量計測システムを構築したことにより,現在は種々の日照条件や気温条件における発電量の計測を進めている.平成24年度でも引き続き太陽光発電における発電量の計測を行う.これと並行して,カオスニューラルネットワークを用いた提案アルゴリズムの実現に関しても,その根幹的な部分のアルゴリズムの構築が完了しおり,平成23年度はパケットルーティング問題に代表される動的な最適化問題に対して提案アルゴリズムの適用を行い,良好な性能を計算機実験により確認している.また,得られた研究成果に関して,国際会議で2編の研究発表を行い,さらにこれらの結果を原著論文としてまとめ研究成果を発表している.以上のことから,研究課題を遂行するための発電量計測システムの構築,及び計算機実験のための高速演算処理が可能な計算機の購入は平成23年度において概ね完了している.そこで平成24年度では,現在まで得られた知見をもとに最適動作点追尾問題に対するカオスニューラルネットワークを用いた手法の適用を行い,性能評価及び解析を推し進める.さらに,得られた成果を国際会議や原著論文として発表する.従って,平成24年度研究費の主な使用計画は,原著論文として成果を発表するための論文印刷費や,研究会や国際会議への参加費用など,研究成果を発表するための費用として研究費を使用する予定である.
|